DRIVER UNIT for STAX EARSPEAKERS
を Study する
そ の 3
・STAXのイヤースピーカードライバーをDCアンプ構成で作るとなると、半導体のみで作るか、真空管を用いたいとなれば半導体とのハイブリッド構成で作るしかない。 ・半導体式のイヤースピーカードライバーは、既にA案とC案で2つ作った。ので、つれづれに、ハイブリッド構成のイヤースピーカードライバーをStudyしてみる気になった。 |
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・と言って、真空管に十分な知識があるわけでもない。ので、イヤースピーカードライバーの終段を右のように真空管カソード接地の差動構成とするハイブリッド構成で考える。要するにSTAXの純正ハイブリッドドライブアンプの真似。(^^; で、真似ついでに真空管も安直にSTAX純正ドライバーに採用されている6FQ7≒6CG7とし、この際純正のSRM−007tAと同じく左右をパラ接続にしてみる。 ・6CG7は双三極管であるが、差動用に作られたデュアル管ではないのでパラ接続するためには両者の特性のばらつきを調整する必要があるので、カソードにバイアス電圧調整回路を入れ、その調整時の電流確認のためにプレートに100Ωの抵抗を入れる。シミュレーションモデルの場合完全マッチングペアなのでバイアス電圧調整回路は完全対称となっているが、リアルの世界ではR2&R3、R35&R39は半固定抵抗にして非対称にする必要がある。これで真空管による差動アンプ。トランジスタによる差動アンプと何も違いはない。 ・この構成だと、DCアンプとして無信号時に出力が0Vでなければならないという条件から、真空管の動作点はプラス側の電源電圧と真空管の負荷抵抗R1=R31=47kΩで決まる360V/47kΩ=7.66mAでなければならない。ので、この7.66mAが動作点電流になる。し、当然だがマイナス電源も必須だ。で、Ayumi’s Labさんの真空管モデルでシミュレートすると、この状況で各6C7Gのプレート電流は3.83mAで、グリッドの対カソードバイアス電圧は−14.63Vとなっている。 ・通常真空管はグリッド電圧がカソードに対してプラスの領域(正バイアス)では使わないので、この場合、グリッド電圧に入力する信号電圧はバイアス電圧±14.63Vの範囲でなければならないということになる。から、この場合の最も効率的な前段からの信号入力バイアス電圧は、−360V+14.63V=−345.37Vであり、各6CG7のカソード電圧が−360V+14.63*2V=−330.74Vの場合であると言うことになる。が、何事もぎりぎりでは上手くないので、ここでは前段からの信号入力バイアス電圧を−360V+16V=−344V、各6CG7のカソード電圧を−360V+16V+14.63V=−329.37Vとする。その辺は、前段からの信号入力バイアス電圧を決めれば、後はR34を適正値にすることにより全体整合を確保出来る。このシミュレーションモデルでは1.859kΩとなった。リアルの世界ではこれを半固定抵抗とし調整することになる。 ・早速、前段からバランス信号を入力して、その利得−周波数特性を観る。 |
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・上右の通り、結果バランス出力(緑)の利得はDC〜100kHz超まで約30dB(33倍)であり、各相出力(赤と青、重なっている)はその−6dBの約24dBである。ゲインが比較的に大きくないためということではあるが、非常に広帯域だ。 ・ゲインについては、上左の静特性の通り三極管特性で内部抵抗が低いので負荷抵抗を増やせばゲインが増えるというものではないし、最適負荷に設定しても6CG7のμが20程度と、どちらかというと低μ管なので、まぁ、こんなものか。 ・だから、最終的なイヤースピーカードライバーのクローズドゲインを純正ドライバー同様に54dBに設定することを考えれば、この点を踏まえて前段のオープンゲインを所要量確保する必要がある。 |
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・次に±14.64Vバランス正弦波信号を入力し、出力信号等を観る。 ・要するに、これが許容される入力信号の最大値であるから、これで得られる出力が最大出力ということになる。 |
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・各相出力が青と灰であり、バランス出力がピンクである。また、緑がカソード電圧、赤がグリッド電圧。 ・バランス電圧は960Vp−pに達している。すなわちこれがこの終段の最大出力である。960Vp−pであるから、=340Vr.p.mの最大出力ということになる。 |
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・電源電圧が余っている感もあるので、ものは試しに±16Vのバランス正弦波信号を入力してみる。 |
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・ものは試してみるものだ。別に飽和することもなくバランス出力で1,050Vp−pの正弦波が出力されている。 ・U1のプレート電流(白)とU3のプレート電流(黄銅)を見ても1.2mA〜6.7mAとカットオフすることなくA級動作範囲内である。 ・ということで、前段から−344Vを中点として±16Vの入力信号を与えれば、370Vr.p.mの出力信号が得られるかも知れない。が、これはあくまでシミュレーションなので、実際にもそうなるかはやってみなければ分からない。 |
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・方形波応答はどうか。 ・入力は±14.63Vp-pの10kHz方形波。 ・この際、負荷を0.01pF(無負荷相当)と120pF(SR−303相当)とするパラメトリック解析。 |
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・無負荷の場合の方形波応答波形(緑)では、960Vp-pが綺麗に出力されている。 ・が、30V以上のプリシュートが生じている。 ・負荷120pFの場合の方形波応答波形(赤)については、終段の動作電流と負荷のCの容量で決まるスルーレートで立ち上がりスピードが制限されこのような波形になる。のは理屈。 ・理論的にこの場合の最大スルーレートは7.66mA/120pF=63.33V/uSである。シュミレート結果を見ると、立ち上がり、立ち下がりの当初には立ち上がり、立ち下がりスピードは早いが、時間の経過とともに徐々にそれが遅くなって平均すると60V/uS〜70V/uSのスルーレートのようなので理屈どおり。 ・で、このスルーレートであると、20kHzで340Vr.m.s.(962Vp−p)の出力が可能ということになるから、この終段をフルにドライブできる前段を用意すれば、出力電圧340Vr.m.sで出力帯域幅DC〜20kHzのイヤースピーカードライバーになるかもしれない。 |
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・次にこの終段をドライブする前段である。 ・前段には適切に大きなオープンゲインが必要だし、終段のドライブのためその信号入力バイアス電圧である−344V程度を中心として±16V程度の間で信号出力するものである必要がある。と、言うことはすなわち前段は−360Vまでレール to レールの出力が可能なものである必要があるということになる。 ・前者は半導体を用いれば難しくはないように思えるが、後者のことを考えるとそう簡単ではない。後者をそういうものにするには抵抗負荷が考えられるが、その場合動作点を1mAとしてもその値を16kΩにしなければならない。ところが、通常この抵抗はゲインを生み出すための負荷となるから、この抵抗値では前段で大きなオープンゲインを確保するのは難しいだろう。何か上手い知恵が必要だ。 ・が、それは先人の考えた次の回路でシンプルに実現する。 ・初段差動アンプの出力をフォールデッドカスコード回路で折り返す実質一段差動アンプに、エミッタフォロアを追加した構成である。この場合、終段の入力インピーダンスが低いわけではないのでエミッタフォロアは必ずしも必須ではないが、次段のドライブ能力を高めたいという意味では悪くないだろう。 ・なお、2段目の2SA1145は2SA1156のシミュレーション上のダミー。また、1.6Vの電圧源は赤のLEDのつもり。 |
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・で、要は勿論2段目マイナス側に挿入されたQ5、Q6とR8〜R12で構成される回路である。 ・MJ2010年2月号で、純正のSRM−600Limitedの同様の回路を柴崎先生は定電流回路と解説しておられる。が、勿論これは定電流回路ではない。ここを定電流回路にすると確かに大きなゲインが得られるのでその意味では良いが、ここを定電流回路にしたのでは、終段のドライブのための−360V+16V=−344Vを中心として±16Vの間で信号出力するという機能は果たせない。 ・かといってここを単なる抵抗負荷にすると、終段が求めるDCバイアス電位の関係上、2段目の動作点を1mAとしても16kΩとしなければならないので、今度はオープンゲインが十分に確保できない。 ・そこで、この回路なのだが、この回路の肝は、2段目上からの同相入力に対するインピーダンスと逆相入力に対するインピーダンスが異なるというところである。すなわち、この場合、逆相入力に対するインピーダンスはR11=R12の300kΩに近い値となる一方、同相入力に対してはR8〜R12の設定(R11=R12とR10の設定)で10〜20kΩ等の低い値に設定出来るのである。 ・この回路では上からの2段目の動作点電流が同相入力だが、それに対するこの回路のインピーダンスは10〜20kΩ程度となる。ので、これで終段が必要とする低いバイアス電圧を上手く作り上げることが出来る一方、逆相入力される音楽信号に対するこの回路のインピーダンスは300kΩ弱の大きな値となる。ので、入力信号に対する大きなゲインが確保できるのである。しかもその出力電圧振幅はほぼマイナス側電源電圧にレール to レールであり、シミュレーションではそのロスは僅かに0.2Vである。 ・その辺は、下のシミュレーションの如くだが、これを良く観るとその動作原理が理解できる。要するに300kΩと2SC1815がパラレルで負荷になっている。しかして、逆相入力ではR3(右の回路図ではR10)に発生する電圧は変動しないため、逆相入力に対してはQ1、Q2(右の回路図ではQ5、Q6)は無いのと等価になるというもの。 |
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・その結果、この回路のオープンゲインは上右のようにDCから20kHzの可聴帯域で55dB程度である。K先生のように可聴帯域のNFB量は一定であるべきとの考えからすると理想的な特性だ。 ・で、この回路と上の終段を組み合わせれば85dBのオープンゲインになるから、クローズドゲインを54dBに設定するとしても30dB以上のNFBが確保できることになる。これまで作った半導体式ドライブアンプに比較すれば20dB以上少ないということになるが、まぁ、良いのではなかろうか。 |
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・これで、−360V+16V=−344V程度を中心に±16Vのバランス出力を生み出せるか?を、正弦波信号を入力して出力信号で観る。 |
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・素晴らしい。(^^) |
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・方形波応答はどうか。 |
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・素晴らしい。(^^) |
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・ので、早速この前段と先の後段をドッキングして全体を構成し、その利得−周波数特性を観る。 ・先ずはNFBを掛けない裸特性。 |
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・予想通り80dBのオープンゲインとなった。その周波数特性は、帯域の狭い前段のそれとなっている。のは当然。 |
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・ここで終段の主力点から初段FET差動アンプのソースにNFBを掛け、その場合のオープンゲイン、クローズドゲイン、そしてループゲインを観る。 |
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・オープンゲイン(赤)が93dBとNFBを掛けない上の場合より13dBも大きくなった。のは、不思議だが、それはNFBを初段のソースに戻すために、そのソース抵抗による電流帰還がキャンセルされるため。あるいは演算式が間違っているためかな。(^^; ・クローズドゲインはNFB抵抗を153kΩとしたので53dB程度であり、したがって、ループゲイン≒NFB量は40dB程度である。 ・クローズドゲインの2MHz弱に10dBほどのピークが生じており、位相補正的に問題がある。が、とりあえず放置。 |
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・で、LTSpiceの占いによれば、これで40dBのNFBが掛かっているわけだが、この仕上がり状態での出力正弦波応答と方形波応答を観る。 |
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・10kHz正弦波。緑が出力電圧波形。後は全て電流波形で、赤がU1+U2のプレート電流、水色がU3+U4のプレート電流、そしてピンクが負荷のC5=120pF(SR−303相当)に流れる電流である。 |
・10kHz方形波。パラメトリック解析で、緑が無負荷の場合、赤が負荷C5=120pF(SR−303相当)の場合である。 |
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・電流値を観れば分かるが、これで殆ど最大出力である。抵抗負荷のため出力効率が悪く、終段素子をトータルで16mAp−p振って負荷C5に流れる出力電流は8mAp−pである。 | ・無負荷の場合立ち上がり、立ち下がりにリンギングが生じる。この辺は周波数特性の2MHz付近のピークのためだろう。が、負荷C5=120pF(SR−303相当)が繋がっている場合は素直で綺麗な応答波形だし、無負荷時のリンギングもこの程度なら、敢えて位相補正しないでこれでも良いかもだ。 |
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・次にFFTで1kHz正弦波入力の場合の歪みの様子を観る。 |
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・入力2Vp−p、したがって出力900Vp−p程度での場合。 |
・入力0.5657Vp−p したがって出力250Vp−p程度の場合。 |
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・Total Harmonic Distortion: 0.005818% | ・Total Harmonic Distortion: 0.001454% | ||
・入力2Vp-pは出力970V-p-pの最大出力、入力0.5657V入力は、出力282Vp−p=100Vr.m.s.を狙った設定なのだが、NFB抵抗の設定のせいか仕上がりゲインがやや小さく、出力がそこまで達しない。 ・のは、特に問題ではない。 ・で、なんとも非常に低歪率だ。これが本当なら実に素晴らしいのだが、実際はどうだろうか。(^^) |
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・と、いうわけで、下手な検討はこの辺で終了し実際に作ってみる。 ・ことは今回はしない。(^^; ・のは、これで作っても純正のSRM−007tAの殆どクローンなので何も面白くない。(爆) ・し、真空管は電源オンから正常動作移行までに時間を要するので、真空管のヒーターのヒートアップ後の電源の投入やそのためのタイマー装置の組み込み、また、DCアンプとしてはその間の過渡期の安全性確保のための電流逆流防止回路等の回路への組み込みなども検討しなければならない。が、クローンではそれらを考える気力が湧かない。(^^; |
(2010年12月12日)
その4
・SRA−10Sもどき。 |
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・負荷120pF時のゲイン−周波数特性を観る。
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・終段Q4、Q5のコレクタ間のC1、50pFは何か? ・を、観るために、C1をパラメトリックに0.001pF(無しに相当)、25pF、50pF、100pF、200pFとしたゲイン−周波数特性を観る。負荷はオープン(無負荷)である。 ・C1が0.001pF(無しに相当)の場合には2.5MHz付近にピークが生じている。この結果からすると、C1=50pFは位相補正。 |
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・同様、今度は負荷に120pF(SR−307相当)がつながった場合を観る。 ・この場合は、負荷の120pFも位相補正となるので、Q4、Q5のコレクタ間のC1は不要ということ。 ・要すれば50pFのC1は、負荷オープン時の発振を防ぐための位相補正。 |
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・負荷120pF時の低域での最大出力を観る。 ・入力は1kHz正弦波で、パラメトリックに0.5Vp−p、0.51Vp−p、0.52Vp−p、0.53Vp−p、0.54Vp−p。 ・入力0.54Vp−pで出力電圧が飽和し、負荷C4に流れる電流(赤)も0A付近で正弦波軌跡から外れ、鍵型軌跡になっている。 ・ので、最大出力電圧は入力0.53Vp−pで出力≒480Vp−p≒339Vr.m.s.といったところ。 ・なお、公称は300Vr.m.s.。公称の方は、歪率も加味して設定しているものだから、違うのは当たり前。 |
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・負荷120pF時の20kHzでの最大出力を観る。 ・入力は20kHz正弦波で、パラメトリックに0.2Vp−p、0.25Vp−p、0.26Vp−p 0.3Vp−p。 |
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・負荷120pF時の10kHz方形波応答。 ・入力は10kHz方形波で、パラメトリックに0.1Vp-p、0.2Vp−p、0.4Vp−p、0.8Vp−p。 ・出力波形(緑)は素直な応答であるが、終段トランジスタQ4(水色)とQ5(ピンク)のコレクタ電流波形と、負荷C4に流れる電流波形(赤)は、入力0.2V以上の場合にどの波形も立ち上がり、立ち下がり時に発振状況となっており、あまり芳しくはない。 ・まぁ、ダミーに用いたトランジスタのモデルパラメータ等の問題かな。 |
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・SRM−1もどき。 |
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・負荷120pF時のゲイン−周波数特性。 ・オープンゲイン(赤)は、低域で85dB。 |
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・負荷120pF時の低域での最大出力。 |
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・負荷120pF時の20kHzでの最大出力。 ・入力は20kHz正弦波で、パラメトリックに0.45Vp−p、0.47Vp−p、0.49Vp−p。 ・入力0.49Vp−pでは、Q4、Q4のエミッタ電流が上下で飽和し暴れが生じており、負荷C4に流れる電流もピークからの下降時に暴れが生じる。 ・ので、入力0.47Vp−pで最大出力電圧360Vp−p≒255Vr.m.s.程度。 ・終段のアイドリング電流は7.14mA、負荷120pFなので、スルーレートは59.5V/uS。従って、20kHz正弦波での最大出力電圧は≒473Vp−pとなるはずだが、終段の負荷抵抗R10、R11と、帰還回路のR15、R16にも電流が分流し、負荷C4に回せる電流は最大5.4mAp−p。結果スルーレートは45V/uS。従って、20kHz正弦波での最大出力電圧は≒360Vp−p。といった感じ。
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・負荷120pF時の10kHz方形波応答。 ・入力は10kHz方形波で、パラメトリックに0.1Vp-p、0.2Vp−p、0.4Vp−p、0.8Vp−p。 ・出力波形(緑)は素直な応答。 ・終段トランジスタQ4(水色)とQ5(ピンク)のコレクタ電流波形と、負荷C4に流れる電流波形(赤)も、どの入力電圧の場合にも一部リンギングが生じているが、総じては綺麗なのでこの程度なら問題ない? |
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・ちなみに、同上で位相補正の3pFをなくすと、 ・出力波形には多少リンギングが生じる程度のように見えるが、Q4とQ5のエミッタ電流波形と、負荷C4に流れる電流波形にはかなりリンギングが生じており、芳しくない。 |
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・右は10pFの場合。 ・出力応答波形は大分丸くなるが、Q4とQ5のエミッタ電流波形と、負荷C4に流れる電流波形は、入力0.8Vp−p時以外は素直なものになる。 |
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・SRM−1/MK2もどき。 |
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・オープンゲイン(赤)は、低域で109dB。 |
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・負荷120pF時の低域での最大出力。
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・負荷120pF時の20kHzでの最大出力。 ・入力は20kHz正弦波で、パラメトリックに0.35Vp−p 0.4Vp−p 0.45Vp−p、0.5Vp−p、0.6Vp−p。 ・出力電圧波形からは、入力0.6Vp−pで最大出力電圧520Vp−pも正常に出力出来ているように見える。 ・が、Q6、Q7のコレクタ電流波形(青、空色)と負荷C3に流れる電流波形(赤)を観ると、入力0.4Vp−pを超えると、Q6、Q7のコレクタ電流は最小値が0mAで飽和し、C3に流れる電流も波形に暴れが生じていることから、入力0.4Vp−p、最大出力電圧は350Vp−p≒247Vr.m.s.が良いあたりか。 ・終段のアイドリング電流は6.67mAだが、2段目差動アンプの負荷抵抗と、帰還回路にも電流が分流し、負荷C3に回せる電流は最大5.25mAp−pで、結果スルーレートは43.75V/uS。従って、20kHz正弦波での最大出力電圧は≒350Vp−pといった感じ。
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・負荷120pF時の10kHz方形波応答。 ・入力は10kHz方形波で、パラメトリックに0.1Vp-p、0.2Vp−p、0.4Vp−p、0.8Vp−p。 ・出力電圧波形は非常に素直である。が、2段目差動アンプQ6、Q7の出力コレクタ電流波形(空色、ピンク)と、負荷C3に流れる電流波形(赤)を観ると、入力0.2Vp−p以上の場合、やや乱れがある。
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・ちなみに、同上で位相補正の4pFをなくすと、 ・出力電圧波形自体にもリンギングが生じるし、Q6、Q7の出力コレクタ電流波形と、負荷C3に流れる電流波形もかなり乱れている。 |
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・位相補正値をいじって、右は10pFの場合。 ・出力応答波形はそれほど丸くならないままQ6、Q7の出力コレクタ電流波形と負荷C3に流れる電流波形は、より素直なものとなる。 ・が、だからどうこう、ということではない。 |
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・SRM−T1もどき。 ・初段差動アンプ出力を、フォールデットカスコードで折り返して、終段の真空管による差動アンプ出力をそのままアンプの出力とし、NFBもそこから初段に電流帰還。 ・三段構成に見えるが、実質はSRM−1/MK2もどきと同様2段差動アンプ。これも完全DCアンプ。 ・したがって出力は0Vでなければならないので、R27を調整して0Vとする。そうすると必然的に終段のアイドリング電流は320V/66kΩ=4.85mA。 ・出力のプラスマイナス最大電圧が非対称とならないように、マイナス電圧がプラス電圧+30Vとなっている。 ・D1〜D6は保護回路なので、シミュレーション上意味はない。 |
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・オープンゲイン(赤)は、低域で94dB。 |
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・負荷120pF時の低域での最大出力。 |
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・負荷120pF時の20kHzでの最大出力。 ・入力は20kHz正弦波で、パラメトリックに0.2Vp−p 0.25Vp−p 0.28Vp−p、0.3Vp−p。 ・出力電圧波形からは、入力0.3Vp−pで最大出力電圧280Vp−pも正常に出力出来ているように見える。 ・が、U1、U2のプレート電流波形(青、空色)と負荷C1に流れる電流波形(赤)を観ると、入力0.28Vp−pでU1、U2のプレート電流は最小値が0mAと限界に達し、C1に流れる電流に暴れが生じない限界もそこであること分かる。最大出力電圧は、入力0.28Vp−p時の259Vp−p≒183Vr.m.s.。 ・終段のアイドリング電流は4.85mAだが、6FQ7の負荷抵抗と帰還回路にも電流が分流し、負荷C1に回せる電流は最大3.8mAp−p。結果スルーレートは32.5V/uS。従って、20kHz正弦波での最大出力電圧は≒259Vp−p。といった感じ。 |
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・負荷120pF時の10kHz方形波応答。 ・入力は10kHz方形波で、パラメトリックに0.1Vp-p、0.2Vp−p、0.4Vp−p、0.8Vp−p。 ・出力電圧波形は非常に素直である。が、終段U1、U2のプレート電流波形(空色、ピンク)と、負荷C1に流れる電流波形(赤)を観ると、かなり乱れている。 |
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・ちなみに、同上で位相補正の10pFをなくすと、 ・出力電圧波形にはオーバーシュート、アンダーシュートが生じるが、終段U1、U2のプレート電流波形と、負荷C1に流れる電流波形は、かえって乱れが小さくなった。 ・いくつかシミュレーションしてみると、これを15pFにすると、出力電圧波形そのものが発振状態になってしまう。 |
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・では、と、これは、位相補正をU1、U2のグリッド−プレート間の10pFで行った場合。 ・出力電圧波形はやや丸くなるが、終段U1、U2のプレート電流波形と、負荷C1に流れる電流波形は綺麗だ。 ・このシミュレーションに用いたモデルでは位相補正はこの方が適切? |
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・私のC案。 ・この状態で2段目差動アンプQ6、Q7のコレクタ電流は4.6mAである。 ・STAXの現行純正機にこういう構成のものはないので、この構成のものは私が初めてかな?と思っていたのだが、とうの昔に純正のSRM−1/MK2で採用されていたのだね。 ・かつてC案を検討した際とはモデルが変わっているので、改めてシミュレートしてみる。 ・最初に位相補正の適正値。 ・C1、C2を0.0001pF(無しに相当)、0.5pF、1pF、2pF、4pF、8pFとするパラメトリック解析。 |
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・まず、無負荷の場合。 ・オープンゲイン(赤)は、低域で118dB。 ・クローズドゲイン(緑)は、低域で54dB。 ・ループゲイン≒NFB量(青)は、低域で64dB。 ・無負荷の場合、位相補正なしでは4.5MHz付近にピークを生じて上手くない。 ・で、位相補正C1、C2は0.5pFで問題はなさそう。 ・が、位相補正0.5pF以上の場合10MHz以上の下降局面にピークが出来る。 ・何故か?は不明だが、この辺は用いるモデルによるので気にしない。(爆) |
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・次に、実使用の負荷120pFの場合。 ・この場合は位相補正C1、C2はなくとも良いとの結果。 ・負荷の120pFにより2段目差動アンプの高域のゲインが下がる、その意味で負荷の120pFが位相補正になっているためだが、この場合、10MHz以上の下降局面にピークもなくなった。 ・結論として、位相補正C1、C2は0.5pFで良い。 |
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・念ののため、負荷C3の容量がさらに増加した場合にどうなるかを観る。 ・負荷C3を480pFにした場合。 ・位相補正的には、負荷C3の容量の増加はより安全方向に働く。ので、やはり位相補正は0.5pFで良い。 ・ところで、負荷C3の容量の増加は、高域のゲインを狭める方向に働くことも分かる。 ・負荷C3の容量が増えるほどにそのインピーダンスがより低域から小さくなるためで、この回路構成では当然。 |
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・負荷120pF時の低域での最大出力。 |
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・負荷120pF時の20kHzでの最大出力。 ・入力は20kHz正弦波で、パラメトリックに0.5Vp−p 0.6Vp−p 0.62Vp−p、0.7Vp−p。 ・出力電圧波形からは、入力0.7Vp−pの際にも正常な出力電圧が出ているように見えるが、Q6、Q7のコレクタ電流波形(空色、ピンク)と負荷C3に流れる電流波形(赤)を観ると、入力0.62Vp−pでQ6、Q7のコレクタ電流は最小値が0mAと限界に達し、C3に流れる電流に暴れが生じない限界もそこであること分かる。 ・最大出力電圧は、入力0.62Vp−p時の295Vp−p≒209Vr.m.s.。 ・終段のアイドリング電流は4.6mAだが、帰還回路にも電流が分流し、負荷Cに回せる電流は最大4.38mAp−p。結果スルーレートは36.5V/uS。従って、20kHz正弦波での最大出力電圧は≒290Vp−p。 |
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・負荷120pF時の10kHz方形波応答。 ・入力は10kHz方形波で、パラメトリックに0.2Vp-p、0.4Vp−p、0.8Vp−p、1.6Vp−p。 ・出力電圧波形は非常に素直である。 ・Q6、Q7のコレクタ電流波形と、負荷C3に流れる電流波形は、なかなか幾何学的。 |
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・時間軸を伸ばしてみると、 ・なかなか面白い応答だが、発振のような乱れはない。 |
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・ちなみに、同上で位相補正の5pFをなくすと、 ・ほとんど変化はない。 |
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・私のA案。 ・この状態で終段プッシュプルエミッタフォロアQ12、Q14、Q16、Q18のエミッタ電流は10.1mAである。 ・これも、かつて検討した際とは、モデルが変わっているので、改めてシミュレートする。 ・最初に位相補正の適正値。 ・C1、C2を0.0001pF(無しに相当)、0.5pF、1pF、2pFとするパラメトリック解析。 |
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・まず、無負荷の場合。 ・オープンゲイン(赤)は、低域で119dB。 ・クローズドゲイン(緑)は、低域で54dB。 ・ループゲイン≒NFB量(青)は、低域で65dB。 ・無負荷の場合、位相補正なしでは2MHz付近に鋭いピークを生じて上手くない。 ・で、位相補正C1、C2は0.5pFで問題なさそう。 |
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・次に、実使用の負荷120pFの場合。 ・この場合も位相補正C1、C2は0.5pFで問題ない。 ・さらに負荷容量を増やしてシミュレートしてみたが、状況に変化はなく、よって、位相補正は0.5pFで良い。 |
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・が、出力にシリーズのR42、R43の1kΩを取り外してしまうとこう。 ・フォロアの場合、容量負荷には要注意。この場合、R42、R43の1kΩは必須。 |
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・逆に、出力にシリーズにR42、R43の1kΩを入れておけば、右は負荷C7を10倍の1200pFにした場合だが、この場合も位相補正C1、C2は0.5pFで問題ない。 |
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・負荷120pF時の低域での最大出力。 ・入力は1kHz正弦波で、パラメトリックに0.9Vp-p、1Vp−p、1.07Vp−p、1.1Vp−p。 ・これから、最大出力電圧は入力電圧1.07Vp−p時の517Vp−p≒366Vr.m.s.。入力1.1Vp−pでは、出力電圧が飽和し、負荷C9に流れる電流(赤)も0A付近で鍵型になる。 |
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・負荷120pF時の20kHzでの最大出力。 ・入力は20kHz正弦波で、パラメトリックに0.9Vp-p、1Vp−p、1.07Vp−p、1.1Vp−p。 ・入力電圧も1kHz入力の場合と同じであり、出力電圧波形も負荷C9に流れる電流波形(赤)も全く同じ。違うのは負荷C9に流れる電流値。Q12とQ14のエミッタ電流波形(青、空色)も同じであることが分かる。 ・終段がプッシュプルで、そのアイドリング電流も10.1mAなので、20kHzにおいても、最大出力電圧は、終段のアイドリング電流ではなく、電源電圧によって制限されている。 |
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・この場合は、高域50kHz正弦波まで低域と同じ最大出力電圧が得られる。 |
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・負荷120pF時の100kHzでの最大出力。 ・入力は100kHz正弦波で、パラメトリックに0.5Vp−p 0.55Vp−p 0.6Vp−p。 ・結果、100kHz正弦波では、入力0.55Vp−p時に最大出力電圧263Vp−p≒186Vr.m.s.。 ・終段がプッシュプルで、そのアイドリング電流が10mAだから、負荷C9に供給できる電流は20mAである。従って、スルーレートは167V/uS。従って100kHz正弦波での最大出力電圧は265Vp−p。と、いうこと。 |
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・負荷120pF時の10kHz方形波応答。 ・入力は10kHz方形波で、パラメトリックに0.2Vp-p、0.4Vp−p、0.8Vp−p、1.6Vp−p。 ・出力電圧波形は非常に素直である。 ・Q12、Q14のエミッタ電流波形と、負荷C7に流れる電流波形は、早すぎて見えにくい。 |
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・ので、時間軸を伸ばしてみると、 ・綺麗だね。 |
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・私のB案。 ・この状態で、終段エミッタフォロアQ10、Q11のエミッタ電流は10.7mAである。 ・最初に位相補正の適正値を探る。 ・C1、C2を0.001pF(無しに相当)、0.5pF、1pF、2pF、4pFとするパラメトリック解析。 |
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・無負荷の場合。 ・オープンゲイン(赤)は、低域で119dB。 ・クローズドゲイン(緑)は、低域で54dB。 ・ループゲイン≒NFB量(青)は、低域で65dB。 ・無負荷の場合、位相補正なしでは3MHz付近にややピークを生じて上手くないが、位相補正C1、C2は0.5pFで何の問題なさそうだ。 |
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・次に、実使用時の負荷120pFの場合。 ・この場合も位相補正C1、C2は0.5pFで問題ない。 ・さらに負荷容量を増やしてシミュレートしても状況に変化はなく、よって、位相補正は0.5pFで良い。 |
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・が、出力にシリーズのR22、R23の1kΩを取り外してしまうとこう。 ・やはりフォロア。この場合R22、R23の1kΩは必須。 |
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・逆に、出力にシリーズのR22、R23の1kΩを入れておけば、右は負荷C7を10倍の1200pFにした場合だが、この場合も位相補正C1、C2は0.5pFで問題ない。 |
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・負荷120pF時の低域での最大出力。 ・入力は1kHz正弦波で、パラメトリックに1.3Vp-p、1.4Vp−p、1.44Vp−p、1.55Vp−p。 ・これから、最大出力電圧は入力電圧1.44Vp−p時の695Vp−p≒491r.m.s.。入力1.55Vp−pでは、出力電圧が飽和し、負荷C3に流れる電流(赤)も0A付近で鍵型になるほか暴れが生じる。 |
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・負荷120pF時の20kHzでの最大出力。 ・入力は20kHz正弦波で、パラメトリックに1.3Vp-p、1.4Vp−p、1.44Vp−p、1.55Vp−p。 ・入力電圧も1kHz入力の場合と同じであり、出力電圧波形と負荷C3に流れる電流波形は、負荷C3に流れる電流値が大きくなっていることを除けば基本的に同じ。 ・終段のアイドリング電流が10.7mAなので、20kHzにおいても終段のアイドリング電流による最大出力電圧は、電源電圧により制限される1kHz正弦波の場合と同じである。 ・終段エミッタフォロアQ10、Q11のエミッタ電流波形(空色、ピンク)も、負荷C3に流れる電流波形(赤)も入力1.55Vp−pの場合乱れが生じている。 ・ので、正弦波20kHzにおける最大出力電圧は1.44Vp−p時の697Vp−p≒493V。 ・終段のアイドリング電流が10.7mAだから、負荷C9に供給できる電流は10.4mAである。従って、スルーレートは86.7V/uS。従って20kHz正弦波での最大出力電圧は690Vp−p。 |
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・負荷120pF時の10kHz方形波応答。 ・10kHz方形波だが、この際ダブルパラメトリックに入力が0.2Vp-p、0.4Vp−p、0.8Vp−p、1.6Vp−pに、そして、出力にシリーズの抵抗R22、R23が1kΩ、5.1kΩ、10kΩ。 |
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・結果がこう。 ・何故か、出力にシリーズのR22、R23が1kΩの場合、立ち上がり、立ち下がり時にオーバーシュートがある。 ・5.1kΩ、10kΩではそれが消える。 |
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・ちょっと見にくいので、時間軸を拡大する。 ・と、その様子がよく分かる。 ・終段フォロアの場合、容量負荷でNFBが不安定になりやすいが、出力にシリーズに抵抗をシリーズに挿入することによってこれを防げる。が、その抵抗値にも最適値がある。 ・この場合、R22、R23は5.1kΩが妥当のようだ。 |
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・なので、R22、R23を5.1kΩとして、 ・負荷120pF時の10kHz方形波応答。 ・入力は、パラメトリックに0.2Vp-p、0.4Vp−p、0.8Vp−p、1.6Vp−p。 ・出力電圧波形は非常に素直である。 ・Q10、Q11のエミッタ電流波形と、負荷C3に流れる電流波形は、こんなものかな。 |
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・時間軸を伸ばしてみると、 ・それなり。 |
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・が、 ・右はその方形波応答時の、終段エミッタフォロアQ10のベース電圧(赤)とエミッタ電圧(青)、そしてその差電圧(黄)の推移を観たもの。 ・Q10は、出力とは逆位相となるので、出力が立ち上がる局面ではQ10のベースもエミッタも立ち下がらなければならないのだが、ベース電位が高速に立ち下がっているのに、エミッタ電位がこれに追随できず、結果、ベース−エミッタ間になんと数百V(この場合最大700V)の逆電圧がかかってしまっている。 ・シミュレーションではこれでもQ10は壊れないが、実機でこれをやったら、Q10は破損だ。 |
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・こちらは、Q11であるが、Q11は出力とは同位相となるので、出力が立ち上がる局面ではQ10のベースもエミッタも立ち上がらなければならないのだが、こちらはベース電位もエミッタ電位も高速に立ち上がっている。ベース電位とエミッタ電位が逆バイアスになることもないようだ。 ・シングルエミッタフォロアに容量が負荷となった場合、容量を充電する立ち上がりでは急速に容量を充電できるのに、立ち下がりではトランジスタがカットオフ状態になるので、容量の放電をアクティブに出来ず、負荷C3の電位を下げられない。 ・要すれば、エミッタ電位は終段の動作電流と負荷C3の容量で定まるスルーレートでしか立ち下がれない。のに、NFBの作用で前段はベース電位をさらに引き下げようとする。結果、ベース−エミッタ間に数百Vの逆電圧がかかってしまう。 |
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・それを、負荷120pF時の20kHzでの最大出力で観る。 ・入力は20kHz正弦波で、パラメトリックに1.3Vp-p、1.4Vp−p、1.44Vp−p、1.55Vp−p。 ・終段エミッタフォロアQ10、Q11のベース電位、エミッタ電位とその差電圧を観る。 ・入力1.44Vまでは、ベース電位とエミッタ電位は重なっているが。入力1.55V時には、0Vから下降の局面で、ベース電位の下降速度が速まり、これにエミッタ電位の下降速度が追いつけず、結果、ベース−エミッタ電位に最大マイナス100V程度の逆バイアス電圧がかかることが分かる。 |
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・時間軸を拡大。 ・結論として、シングルエミッタフォロアのB案では、終段にそのアイドリング電流と負荷Cの容量で定まるスルーレートを超える信号を入力してはいけないのだ。 ・だから、アンプの入力にローパスフィルターを入れて、そういう信号がアンプに入らないようにしないといけない。 ・また、実機に負荷120pFをつないで、方形波を入れてその応答をオシロで見るなどということをしてはいけない。 |
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・ちなみに、これは終段がプッシュプルエミッタフォロアであるA案の場合。 ・こちらは何の問題も生じない。 |
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・プッシュプルエミッタフォロアは、負荷Cに対して、充電時も放電時もカットオフすることはなく、アクティブに対応できる。だから、シングルエミッタフォロアのB案のような問題は生じない。 |
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・シングルエミッタフォロアのB案のこの問題、何とかならないか。 ・エミッタ電位が終段の動作電流と負荷C3の容量で定まるスルーレートでしか立ち下がれないのに、NFBの作用で前段はベース電位をさらに引き下げようとする結果、ベース−エミッタ間に数百Vの逆電圧がかかってしまう。 ・のであれば、逆電圧がかかる状態になる際に、それがトランジスタの耐圧を超えないように、Q10、Q11のベース-エミッタ間に保護ダイオードを挿入して、これを0.6Vに制限すればどうか。 ・それが右。D5、D6を追加。 |
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・なんと、Q10のベースも電位が高速に立ち下がることがなくなり、ベース−エミッタ間に数百Vの逆電圧がかかることがなくなった。 |
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・信号と同相に立ち上がる場合をタイミングのQ11側は、もとより問題はなかったのだが、良く見るとさらに問題のない応答になっているのが分かる。 ・う〜ん。。。これでB案で実際に作るモチベーションが高まるか? |
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・SRM−313もどき。 |
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・オープンゲイン(赤)は、低域で106dB。 |
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・負荷120pF時の低域での最大出力。 ・入力は1kHz正弦波で、パラメトリックに0.5Vp-p、0.55Vp−p、0.6Vp−p、0.65Vp−p。 ・これから、最大出力電圧は入力電圧0.6Vp−p時の590Vp−p≒417Vr.m.s.。入力0.65Vp−pでは、出力電圧が飽和し、負荷C3に流れる電流(赤)も0A付近で鍵型になる。 ・公称350Vr.m.s.。 |
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・負荷120pF時の20kHzでの最大出力。 ・入力は20kHz正弦波で、パラメトリックに0.12Vp−p 0.14Vp−p 0.16Vp−p。 ・出力電圧波形も、入力0.16Vp−pの際に歪んでいることが分かるが、Q10、Q11のエミッタ電流波形(空色、ピンク)と負荷C3に流れる電流波形(赤)を観ると、入力0.14Vp−pでQ10、Q11のエミッタ電流は最小値が0mAと限界に達し、C3に流れる電流に暴れが生じない限界もそこであること分かる。 ・最大出力電圧は、入力0.14Vp−p時の132Vp−p≒93Vr.m.s.。 ・終段のアイドリング電流は2.1mAだが、帰還回路にも電流が分流し、負荷Cに回せる電流は最大2mAp−p。結果スルーレートは16.7V/uS。従って、20kHz正弦波での最大出力電圧は≒133Vp−p。といった感じ。 |
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・負荷120pF時の10kHz方形波応答。 ・入力は、パラメトリックに0.1Vp−p、0.2Vp−p、0.4Vp−p、0.8Vp−p。 ・終段スルーレートが16.7V/uSでは、こんなものか。入力0.4Vp−p以上では、方形波ではなくて、三角波になってしまう。 ・Q10、Q11のエミッタ電流波形(空色、ピンク)と、負荷C3に流れる電流波形(赤)は、こんなものかな。 |
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・このアンプには10kHz方形波応答は荷が重いので、負荷120pF時の1kHz方形波応答を観よう。 ・入力は、パラメトリックに0.1Vp−p、0.2Vp−p、0.4Vp−p、0.8Vp−pと同じ。 ・ちょっと見にくい。 |
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・時間軸を伸ばしてみると、 ・やはり、方形波応答にはオーバーシュート、アンダーシュートがある。 ・Q10、Q11のエミッタ電流波形(空色、ピンク)と、負荷C3に流れる電流波形(赤)は、定電流回路で電流を縛られていること、その他の要因も絡んでいるのだろう。面白い軌跡だ。 |
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・で、B案と同様に、この場合の終段エミッタフォロアQ10のベース電圧(空色)とエミッタ電圧(ピンク)、そしてその差電圧(黄)の推移を観ると、 ・Q10は、出力とは逆位相となるので、出力が立ち上がる局面ではQ10のベースもエミッタも立ち下がらなければならないのだが、ベース電位はあっという間に立ち下がっている(電源電圧による限界の−300Vまで)のに、エミッタ電位がこれに追随できず(出来ないだけでなく、逆に当初電位が上がっている)、結果、ベース−エミッタ間になんと数百V(この場合最大750V)の逆電圧がかかってしまっている。 ・この辺り私のB案の場合と全く同じだ。 ・大丈夫? |
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・なので、B案の場合と同じように、Q10、Q11のベース-エミッタ間に保護ダイオードを挿入してみる。 |
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・な〜んと、 ・ベース−エミッタ間に逆電圧がかかる問題が解決するだけではなく、出力方形波の立ち上がり速度が上がり、オーバーシュートもない、素晴らしい応答波形になってしまった。 |
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・のは、何故か? ・を、探るために、終段Q10のエミッタ電流の推移(空色)とQ11のエミッタ電流の推移(ピンク)を表示させてみると、 ・な〜んと、Q11のエミッタ電流が、負荷の定電流回路で縛った電流値を超えて15mA近くまで流れ、これが負荷のC3(120pF)に出力電流として流れていることが分かる。だから、スルーレートが大幅に改善し、結果このような綺麗な方形波が出力されることになった訳だ。 |
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・これなら10kHz方形波でも大丈夫ではないか。と、負荷120pF時の10kHz方形波応答。 ・入力は、パラメトリックに0.1Vp−p、0.2Vp−p、0.4Vp−p、0.8Vp−p。 ・終段スルーレートが大幅に改善したので、D1、D2がない場合とは比較にならないほど素晴らしい方形波出力波形である。 ・オーバーシュート、アンダーシュートも消えた。 ・これからすると、オーバーシュート、アンダーシュートの原因が、終段のスルーレートや、終段エミッタフォロアの場合はC負荷でのトランジスタのカットオフも原因であると推察される。 ・Q10、Q11のエミッタ電流波形(空色、ピンク)と、負荷C3に流れる電流波形(赤)を良く観ると、Q10のエミッタ電流増加時はQ11のエミッタ電流は0mAに、Q11のエミッタ電流増加時はQ10のエミッタ電流は0mAになっていることが分かる。 ・出力段は、Q10→C3→Q11、または、Q11→C3→Q10の電流経路で電流が流れて出力波形を作るのだから、これはおかしなことである。 ・となると、この場合、Q10→C3→X、または、Q11→C3→XのXに電流が流れていることになる。 ・Xはどこだ? |
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・を、探るために、さらに、D1に流れる電流推移(青)、D2に流れる電流推移(黄)、2段目のQ6のコレクタ電流推移(灰)、そして同じく2段目のQ7の電流推移(茜)を表示させてみると、 ・大体分かるが、込み入っていて見にくい。 |
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・ので、時間軸を拡大すると、 ・出力の立ち上がり場面では、出力のQ11の電流が負荷C3を経て、まずはQ10へ流れ、Q10がカットオフするとともに、Q10のベース−エミッタ間のD1に流れることが分かる。 ・そして、そのD1に流れた電流は、この回路構成ではそうなるしかないと思うが、なんと2段目のQ7に流れている。要するにQ11→C3→D1→Q7。 ・出力の立ち下がりの場面では、Q10→C3→D2→Q6だ。 ・驚いたね。要すればQ10とQ11のプッシュプルが、Q10が0mAにカットオフするとQ11とQ7のプッシュプルに、Q11が0mAにカットオフするとQ10とQ6のプッシュプルに自動的に移行して出力波形を作り出すのだ。 |
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・驚いたね。このSRM−313もどきの回路。 ・各部の電流を絞って、通常時の消費電力を減らしておきながら、必要なときには、終段TRと2段目TRでのプッシュプルにより、大きなスルーレートを確保して、出力段に大きなアイドリング電流を流したドライバーユニットと同等の高域出力帯域幅を確保している。 ・そうなるのは、終段TRと2段目TRでのプッシュプルの際には、保護回路による電流制限がかからない回路構成となっているから。実に上手い。 ・2段目が差動アンプでなく、ただのエミッタ接地である理由もこれで明らか。差動アンプにしたのでは、その最大電流が動作点の2倍に縛られしまう。 ・さらに、私のB案とは異なり、2段目のエミッタ接地TRと終段エミッタフォロアのTRが同じ極性のTRで構成されているのも、終段TRと2段目TRでのプッシュプルを構成するためには必然だ。 ・すごいね。このSRM−313もどきの回路。 |
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・が、SRM−313もどきの回路とほぼ同じ回路構成と思われる、手持ちのSRM−323AとSRM−252Sのどこを見ても、D1、D2らしきものは見あたらない。(爆) ・となると、やはりSRM−313もどきの回路も、D1、D2はないと考えるべき。 ・SRM−313もどきのこの解析も間違いに違いない。(爆) |
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・SRM−001もどき ・の終段。 ・何の変哲もない差動アンプ。2SK117は今やディスコン。今となっては表面実装の2SK2145とか2SK3320とかかな。 ・高耐圧の2SC3405もディスコンなので、今となっては2SC6127かな。で、それをカスコード接続して耐圧を稼いで高電圧動作を可能とし、D−G帰還NFBを掛ける。 ・これで大丈夫なの?と思えるほどシンプルな構成のドライバー。 ・この状態でJ1、J2のアイドリング電流は0.25mA程度。 ・どの程度の性能が得られるのか? ・まずはゲイン−周波数特性。 ・ついでに位相補正の適正値を探るために、位相補正C3、C5を0.0001pF(無しに相当)、0.1pF、0.2pF、0.3pF、0.4pF0.5pFとするパラメトリック解析。 |
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・まずは無負荷の場合。 ・オープンゲイン(赤)は低域で73dB、クローズドゲイン(緑)は低域で34dB。 ・2SK117のgmはId=0.25mAでは4.5mS程度(2SK2145も2SK3320もチップは同じなのか同様)なので、負荷1MΩだからゲインは4.5*1000=4500=73dB。クローズドゲインはNFBを構成する抵抗の比R8(R9)/R4(R1)=15MΩ/300kΩ=50=34dB。 ・なかなか立派なものだ。 ・位相補正のC3、C5は、ないと300kHz付近にピークを生じるので上手くないが、0.1pFで問題ないようだ。 |
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・負荷44pFの場合。 ・動作電流が小さいので高域特性がオクターブ分下がった。 ・位相補正のC3、C5は、やはり、ないと70kHz付近にピークを生じるので上手くない。0.1pFでも多少持ち上がりがありそうなので、安全を見て0.3pFにしよう。 |
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・ものは試しなので、負荷120pFの場合。 ・位相補正的には、C3、C5は0.3pFで良いが、周波数特性として見ると、10kHzから低下してしまう。次に最大出力電圧的にも観るが、この点でもSR−307相当の負荷120pFは無理かもしれない。 |
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・負荷44pF時の低域での最大出力。 ・入力は1kHz正弦波で、パラメトリックに4Vp-p、6Vp−p、7Vp−p、7.5Vp−p、8Vp−p。 ・これから、最大出力電圧は入力電圧7.5Vp−p時の367Vp−p≒260Vr.m.s.。入力8Vp−pでは、負荷C4に流れる電流(赤)も0A付近で鍵型になる。 ・一方、J1のドレイン電流(空色)もJ2のドレイン電流(ピンク)も、入力電圧7.5Vp−p時に0Aの限界に達しており、1kHz正弦波での出力限界が、電源電圧ではなく、J1、J2の動作電流によるものであることが分かる。 ・要すれば、もっと周波数が低い領域では、もっと出力電圧が稼げるかもしれない。 |
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・と、いうことで、入力を100Hz正弦波でやってみる。 ・入力はパラメトリックに7Vp−p、8Vp−p、8.5Vp−p、9Vp−p。 ・限界は電源電圧的にも動作電流的にも400Vp−p≒283Vr.m.sあたりかな。 |
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・負荷44pF時の20kHzでの最大出力。 ・入力は20kHz正弦波で、パラメトリックに0.9Vp−p 1Vp−p 1.1Vp−p。 ・出力電圧波形も、入力1.1Vp−pの際に歪んでいるかな?だが、J1、J2のドレイン電流波形(空色、ピンク)と負荷C4に流れる電流波形(赤)を観ると、入力1Vp−pでJ1、J2のドレイン電流は最小値が0uAと限界に達し、C4に流れる電流に暴れが生じない限界もそこであること分かる。 ・最大出力電圧は、入力1Vp−p時の43Vp−p≒30Vr.m.s.。 ・J1、J2アイドリング電流は250uAだが、負荷C4に回せる電流は最大230uAp−p。結果スルーレートは5.2V/uS。従って、20kHz正弦波での最大出力電圧は≒42Vp−p。といった感じ。 ・ちなみに、負荷が120pFの場合はスルーレートが1.9V/uSに下がり、従って、20kHz正弦波での最大出力電圧は15.25Vとなる。ので、やはりこれでSR−307等の据え置き型のイヤースピーカーを鳴らすのは無理かな。 |
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・負荷44pF時の1kHz方形波応答。このドライバーの場合は10kHz方形波より1kHz方形波の方が分かりやすいはず。 ・入力は、パラメトリックに1Vp−p、2Vp−p、4Vp−p、8Vp−p。 ・単純な1段差動アンプであるが故か、負荷C4に流れる電流(赤)もJ1のドレイン電流(空色)もJ2のドレイン電流(ピンク)もごく綺麗である。 |
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・後学のために、負荷44pF時の10kHz方形波応答。 ・こちらの方が分かりやすいか。(爆) |
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・で、この一段差動アンプだけではゲインが不足するので、信号を更に20dB程度増幅するとともに、アンバランス信号をバランス信号に変換するため、オペアンプを間に挿入。 ・LT1001はダミー。 ・この状態で、終段差動アンプのJ1、J2のドレイン電流は0.23mAである。上とは接続に違いがあるためちょっと電流が少なくなった。ので、最大出力等はやや低下するだろう。 |
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・負荷44pFの場合のゲイン−周波数特性。 ・オペアンプのゲインが追加されて、トータルゲインは低域で55dB程度。 ・ゲイン−周波数特性の高域における下降特性は、この場合終段の差動アンプの特性によるものなので、上と変わらない。 |
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・負荷44pF時の低域での最大出力。 ・入力は1kHz正弦波で、パラメトリックに0.4Vp-p、0.5Vp−p、0.6Vp−p、0.65Vp−p。 ・これから、最大出力電圧は入力電圧0.6Vp−p時の352Vp−p≒249Vr.m.s.。入力0.65Vp−pでは、負荷C4に流れる電流(赤)も0A付近で鍵型になる。 ・J1、J2のドレイン電流が0.02mA減ったために、1kHzにおける最大出力電圧が、上の場合の367Vp−p≒260Vr.m.s.から352Vp−p≒249Vr.m.s.に減った。 ・公称230Vr.m.s.≒325Vp−p。 |
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・負荷44pF時の20kHzでの最大出力。 ・入力は20kHz正弦波で、パラメトリックに0.07Vp−p、0.08Vp−p、0.09Vp−p。 ・出力電圧波形も、入力0.09Vp−pの際に歪んでいるが、J1、J2のドレイン電流波形(空色、ピンク)と負荷C4に流れる電流波形(赤)を観ると、入力0.08Vp−pでJ1、J2のドレイン電流は最小値が0uAと限界に達し、C4に流れる電流に暴れが生じない限界もそこであること分かる。 ・最大出力電圧は、入力0.08Vp−p時の40Vp−p≒28.3Vr.m.s.。 ・高域の限界は低い。が、耳穴に押し込んで鼓膜に極近いところで聴くカナル型イヤースピーカーにはこれで十分。と言うことが実物を聴くと明らか。 |
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・負荷44pF時の1kHz方形波応答。 ・入力は、パラメトリックに0.1Vp−p、0.2Vp−p、0.4Vp−p、0.8Vp−p。 ・上の場合と特に違いはない。 |
(2014年6月29日)
その5(SRM−T8000もどきなど)
SRM−T8000 |
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・MJ9月号に載ったSRM−T8000の基本回路。 ・真空管式的回路図を、慣れた半導体式に書き換えると、初段をフォールデッドカスコードで折り返した2段差動+終段定電流負荷付きエミッタフォロアと、総じていつものSTAXのドライバーの回路。 ・初段に真空管を採用してあるが、大昔のオール真空管ドライバー時代以来だろう。初段に真空管を起用したハイブリッドドライバーはSTAXのドライバーとしては初めて。 ・その真空管は6922だが、シミュレーションでは同等管のECC88。 ・出力段はトランジスタで、東芝の2SC6127のパラレルダーリントン。 ・2SC6127は表面実装型でポータブルのSRM−002にも起用されているもの。小型の表面実装型とは言え、そのチップは2SC5466と同じだろうから、SRM−002に比べればはるかに大出力のSRM−T8000の出力段に起用されても不思議ではない。今は2SC5466はディスコンだから表面実装型でも2SC6127を使う以外にない。これを放熱器に取り付けるのは素人には相当難儀だと思うが、プロには簡単なんだろう。写真を見るとモジュール化して上手く取り付けられている。 ・それよりも、未だこのようなトランジスタが現行品であることのほうが奇跡的。 ・9月号の回路図に記載してある電圧値や電流値には従い、その他、終段の2SC6127以外は適当なTRで、抵抗定数等も適当に設定して、SRM-T8000のもどきを妄想する。 ・MJ9月号に載ったSRM−T8000の基本回路では、フォールデッドカスコードの受け側の負荷が定電流回路になっているが、定電流出力を定電流負荷で受けると回路動作が破綻する。ので、定電流回路ではなく、STAXのドライバーではSRM-T1以来の定番の例の回路だろうと、その回路にしてある。 |
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・この妄想T8000もどきの回路でもちゃんと動作する。 ・そのゲイン−周波数特性が右。 ・赤がオープンゲイン。緑がクローズドゲイン。青がループゲイン≒NFB量。 ・低域でオープンゲインは89dB。クローズドゲインは60dB。ループゲイン≒NFB量は29dBとなっている。 ・オープンゲインは比較的小さめだが、初段が三極管であることや、二段目差動アンプの負荷が定電流負荷ではなく抵抗負荷であることなどがその理由かな。 |
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・さらに定電流回路をこれまでのSTAXのドライブアンプの例や、9月号の写真から連想し、もう少し現実のT8000に近づけた回路を妄想してみる。 ・それらの定電流回路に1.6Vの定電圧源を使っているが、これはSTAXのドライバーでは良く使われている赤のLEDの代わりである。V2とV7はツェナーダイオードで置き換えれば良いのだがシミュレーション上特にそうする意味もないので定電圧源のままとする。 ・終段エミッタフォロアの定電流回路にも2SC6127が3個づつ使われているのは写真から見て明らかだ。また、写真では放熱器に少し大きめのトランジスタが1個だけ取り付けられているように見え、そのそばに赤色LEDが配置されているので、これは終段マイナス側の定電流回路の定電圧発生回路に温度補償用として用いられているものと妄想してみた。 ・で、下がもう少し現実に近づけたつもりのSRM−T8000もどきの妄想回路。 ・これで初段の定電流回路のQ24のコレクタ電流は=5.97mA、そのフォールデッドカスコード回路の定電流回路のQ25、Q26のコレクタ電流=4.72mA、Q1、Q2、Q3、Q4のコレクタ電流=1.73mA、その負荷であるQ15、Q16のコレクタ電流=1.66mA、2段目差動アンプ定電流回路のQ27のコレクタ電流=2.34mA、2段目差動アンプであるQ8、Q9のコレクタ電流=1.16mA、終段エミッタフォロアのQ7、Q12のコレクタ電流=0.645mA、Q10、Q11、Q13、Q14のコレクタ電流=3.76mA、その負荷の定電流回路のQ18、Q21のコレクタ電流=0.049mA、Q17、Q19、Q21、Q22のコレクタ電流=4.06mA、したがって、終段エミッタフォロア及びその負荷の定電流回路の電流=8.1mA(四捨五入の関係で数値が完全には一致しない。)となっている。 ・電流値も大体それっほくなった。これで出力OUT1、OUT2のオフセット電圧は7.47mVである。 ・その他、保護回路やDCサーボ回路が搭載されているようだが、それらは分かるはずもない。し、シミュレーションには無用。 |
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・そのゲイン−周波数特性。 ・低域でオープンゲインは89dB。クローズドゲインは60dB。ループゲイン≒NFB量は29dB。 ・と、超高域でやや異なるが、肉付け前と殆ど同じ。 |
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・1kHz正弦波で入力電圧を0.5V,0.6V、0.69V、0.7Vp-pとしたパラメトリック解析。中途半端な0.69V入力を加えてあるのは、限界を探った結果。 ・入力電圧0.7Vで出力電圧(緑)のピークが飽和して、イヤースピーカーに見立てた負荷C1(120pF)に流れる電流波形(ピンク)が乱れてしまっており、電源電圧に起因する限界に達している。 ・入力電圧0.69Vではピーク±663Vで出力され、負荷C1に流れる電流波形も正常であることから、1kHz正弦波での出力限界は±663Vp−p=468.8Vr.m.s.である。 ・ところで、SRM-T8000の定格は、最大出力電圧:470V r.m.s./1kHzである。 ・このもどき回路の方はちょっと小さい。 ・が、そもそもこの回路で可能な終段の最大スイング電圧は、終段の電源電圧から2段目差動アンプのカスコード回路のベース電圧20Vを引いた330Vだ。したがって理屈上出力可能電圧は±660Vp−p=466.7Vr.m.s.である。このT8000もどきの1kHz最大出力電圧も理屈どおりそうなっている。(2.1Vの差は測定誤差) ・一方、SRM−T8000の最大出力電圧が470V r.m.s./1kHzであるならば、470Vr.m.s.=±665Vp−pのピーク出力電圧が必要だから、その1/2+20V=352.4Vが理屈上最低必要な電源電圧だ。SRM−T8000の終段電源電圧はMJ記載の±350Vではなく、本当は±360V〜±380V位なのではないかな。 |
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・20kHz正弦波応答。 ・入力電圧を0.4V、0.5V、0.53V、0.6Vp.pとしたパラメトリック解析で、0.53V入力を加えてあるのは、限界を探った結果。 ・入力電圧が0.53V、出力電圧±504Vp−pまで20kHz正弦波出力が出来ているが、入力電圧0.6VではC1(120pF)に流れる電流波形が乱れており、限界を超えていることが分かる。 ・終段の動作電流値が8.1mAであるから、負荷120pFの場合スルーレートは8.1mA/120pF=67.57V/uSであるので、20kHzで出力可能なp−p電圧は67.5V/(π*20kHz)=1,074Vp−pであるから、その1/2=±537Vp−pが正弦波20kHzでの限界出力である。 ・入力電圧0.53Vで出力±504Vp−pで限界に達しているので、33V小さいが、まぁ理屈通り。 ・で±504Vp−p=356Vr.m.s.が20kHz正弦波での最大出力。これは終段の動作電流による限界。 |
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・±0.5Vの100kHz方形波を入力した場合の出力波形。 ・負荷C1=0.001pF(負荷開放相当)と120pFの場合のパラメトリック解析。 ・緑がC1=0.001pF(負荷開放相当)でピンクがC1=120pFの場合。 ・C1=0.001pF(負荷開放相当)の場合にオーバーシュートとアンダーシュートが出ているが、位相補正で消せる可能性はある。が、この程度なら問題ないのでそのままにする。 ・この応答波形から、T8000もどきの無負荷の場合のスルーレートは、2uSで950Vの立ち上がり、立下りなので475V/uSである。 ・C1=120pFの場合は、2uSで156.5Vの立ち上がり、立下りであるからスルーレートは78.25V/uSである。 ・こちらは理屈的には67.57V/uSのはずだが、それよりも大きい。何故か?さぁ。 |
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・次に、1kHz正弦波出力1,000V(正確には981V)p−p時の出力のFFT。 ・バランス出力なので偶数次高調波が打ち消されて2次、4次、6次、8次等偶数次高調波のレベルが小さい。 ・Total Harmonic Distortion=0.003726% ・優秀だ。 ・最大出力時付近におけるこのレベルは、かなり低歪みと言えるのではなかろうか。 ・ちなみに私のA案及びC案の同程度の出力における歪率は、 A案 ・Total Harmonic Distortion=0.019272% C案 ・Total Harmonic Distortion=0.019304% ・私のA案、C案よりオープンゲイン、そしてNFB量は大分小さいのに、この低歪率は凄い。 ・何故だろうね。 |
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・こちらは入力を0.145Vp−pとして出力を282Vp−p(要するに100Vr.m.s.)とした場合。 ・Total Harmonic Distortion=0.000975% ・ところで、STAXのSRM−T8000の公称値は、高調波歪率:0.01%以下/1kHz (イヤースピーカー1台使用時)となっており、出力電圧の表示がないのだが、SRM−007tAやSRM−727Aの公称値には(1kHz 100Vr.m.s.)と明示されているので、SRM−T8000も100Vr.m.s.時であると思われる。 ・そうだとすればこのSRM−T8000もどきはその1/100。 ・まぁ出来すぎだが、シミュレーションの素子は特性に全くばらつきがないのでこうなるのだろう。現実に製作したらこんな良い特性は得られない。 ・ちなみに私のA案及びC案の同出力におけるシミュレーション上の歪率は、 A案 ・Total Harmonic Distortion=0.001413% C案 ・Total Harmonic Distortion=0.001046% ・SRM-T8000もどき。素晴らしい低歪率。 ・私のA案、C案よりオープンゲイン、そしてNFB量は大分小さいのに、この低歪率。やはり、素人が考えたものとプロがお考えになったものとの違いか。 |
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SRM−727A |
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・SRM−727Aの内部を映した写真をネットで入手。 |
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・これらの写真をもとに、これまでのSTAXドライバーの回路を基本として、SRM−727Aの回路を妄想してみる。 ・写真右のケースの奥にあるのは電源部で、中央から左がアンプ部だろうが、アンプ部は終段のトランジスタを放熱する放熱器部分と、その前段の回路を別基盤にしてコネクタで差し込んで取り付けてある。 ・その別基盤を取り外して放熱器に取り付けられたトランジスタとその周辺を映した写真。 |
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・放熱器に取り付けられたものを含めて同じ形状のトランジスタが9個見える。5個は放熱器に取り付けられている。5個の中央のトランジスタのそばには赤のLEDが取り付けられていることから、これは定電流回路の温度補償のためのものだろう。 ・727Aの終段は定電流負荷のエミッタフォロアだろうから、放熱器に取り付けられていない4個は、エミッタフォロア部と定電流回路部を構成するダーリントン接続の前段TR、放熱器に取り付けられた4個が後段TRであろう。放熱器に取り付けられていない4個のTRの外側に小型TRがあるが、これは多分終段エミッタフォロアの電流制限型保護回路ではなかろうか。 ・したがって、写真のコネクタで取り付けられる別基盤以外の、このマザーボードの部分はアンプ回路の終段だ。そしてその終段を構成する9個の四角いトランジスタは、多分2SC5466だろう。 ・そして、これが別基盤。表。 |
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・そして、その裏。 |
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・この基盤に、終段以外のアンプの回路が全て納められている訳だが、 ・基盤の表中央の赤い樹脂で覆われたものがデュアルFET化した初段の差動動作のFET。 ・その左隣のTRがその左下の赤LEDとともに初段の定電流回路。 ・初段のデュアルFETの右上にダイオードが2個横に並んでいるが、これは保護ダイオードで、フォールデッドカスコード回路につながるものだから、従って、その右にある2個のTRとその上にある赤のLEDと半固定抵抗とともにフォールデッドカスコード部の定電流回路を構成している。 ・それらの接続点から左に黒ジャンパーコードでつながった先にあるやや大きめの平たいTRがフォールデッドカスコードの本体TRで形状からして2SA1156だろう。 ・その出力はさらに左のワット数の大きめの抵抗でさらに左側につながっていき、熱結合されたTRとネオンランプ、TRが見えるが、これはフォールデッドカスコードの出力を受けるSTAXのドライブアンプでは恒例の例の回路だろう。熱結合されていないTRとネオンランプは電流制限及び電圧制限の保護回路だ。(MJ2012年2月号のSRM−600 LIMITEDの紹介記事で同じ回路が使用されている。) ・その例の回路のところから2段目につながるわけだから、先のワット数の大きめの抵抗の上下にあるTRが2段目の差動アンプに違いない。差動アンプなのに熱結合されていないんだね。 ・その出力が基盤一番右の小型放熱板に取り付けられたトランジスタにつながっているのだろう。それらが、2段目差動アンプのカスコードTRとその出力を受ける定電流回路に違いない。何故なら損失が大きいために放熱板を使う必要があるのだし、また、2枚の放熱板の間にSTAXのアンプでは定電流回路を構成する場合の定番の赤いLEDが見えているから。 ・そのカスコードTRは2SC5466で、定電流回路には2SA1968かな。あるいは2SA1831なんてこともあるか。これらのTRは今は全てディスコンだが、幸い2SC5466と同じチップと思われる2SC6127が現行品なのでSRM−T8000が成り立ったのだろう。が、2SA1968や2SA1831に代わりうるPNPトランジスタが今はない。そのためSRM−T8000の2段目の負荷が定電流回路ではなく抵抗なのだろう。 ・2段目差動アンプの負荷が定電流回路であるとなると、その2段目差動アンプのエミッタ側は定電流回路ではありえないことになる。ただの抵抗と半固定抵抗を組み合わせることになるだろう。その半固定抵抗が写真左下端にある白いボリュームだろう。 |
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・これらから妄想したSRM−727Aもどきの回路。 ・SRM−727Aは終段エミッタフォロアノンNFBと公称されているいるから、このもどきもそうする。FET、TR、抵抗定数等は適当。 ・また、保護回路と思しきものはシミュレーション上意味がないので省略。 ・これでQ1のコレクタ電流=2.78mA、J1、J2のドレイン電流=1.39mA、Q2,Q3のコレクタ電流=2.05mA、Q4,Q5のコレクタ電流=0.66mA、Q6,Q7のコレクタ電流=0.61mA、Q10、Q11,Q13,Q14、Q26,Q27のコレクタ電流=1.41mA、Q15,Q16のコレクタ電流=7.74mA、Q19,Q20のコレクタ電流=7.21mA、Q21,Q22のコレクタ電流=0.54mAとなっている。 ・終段のアイドリング電流は7.74mAとT8000よりやや小さい。が、本物はどうかは分からない。案外8mA程度かな。SRM−T8000とSRM−727Aの終段用の放熱器、両者同じもののように見えるし。だから終段の損失も同程度なのではと。 |
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・そのゲイン−周波数特性。 ・赤がオープンゲイン。緑がクローズドゲイン。青がループゲイン≒NFB量。 ・低域でオープンゲインは114dB。クローズドゲインは54dB。ループゲイン≒NFB量は60dBとなっている。 ・SRM−727Aのクローズドゲイン設定は54dBなので、このもどきも同じ設定。 ・初段がgmの大きいFETであることと、二段目差動アンプが定電流負荷であることで、T8000よりオープンゲイン、ループゲイン≒NFB量が25dB大きい。 |
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・1kHz正弦波で入力電圧を1.2V、1.3V、1.32V、1.4Vp-pとしたパラメトリック解析。中途半端な1.32V入力を加えてあるのは、限界を探った結果。 ・入力電圧1.4V(正確には1.33V以上)で出力電圧(緑)のピークは飽和し、イヤースピーカーに見立てた負荷C5(120pF)に流れる電流波形(ピンク)が乱れて、電源電圧に起因する限界に達している。 ・入力電圧1.32Vでピーク±704Vで出力され、負荷C5に流れる電流波形も正常であることから、1kHz正弦波での出力限界は±704Vp−p=497.8Vr.m.s.である。 ・SRM-727Aの定格は、最大出力電圧:450V r.m.s./1kHzである。 ・このもどき回路、それらしい。 |
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・20kHz正弦波応答。 ・入力電圧を0.9V、0.92V、0.95Vp-pとしたパラメトリック解析で、0.92V入力を加えてあるのは、限界を探った結果。 ・入力電圧が0.92V、出力電圧±485.5Vp−pまで20kHz正弦波出力が出来ているが、入力電圧0.95VではC5(120pF)に流れる電流波形が乱れており、限界を超えていることが分かる。 ・終段の動作電流値が7.74mAであるから、負荷120pFの場合スルーレートは7.74mA/120pF=64.5V/uSであるので、20kHzで出力可能なp−p電圧は67.5V/(π*20kHz)=1,027Vp−pであるから、その1/2=±513.5Vp−pが正弦波20kHzでの限界出力である。 ・入力電圧0.923Vで出力±485.5Vp−pで限界に達しているので、28V小さいが、まぁ理屈通り。 ・その際負荷C5(120pF)に流れる電流も±7.3mAp−pと終段の動作電流そのもの。 |
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・±0.1Vの50kHz方形波を入力した場合の出力波形。 ・負荷C5=0.001pF(負荷開放相当)と120pFの場合のパラメトリック解析。 ・緑がC5=0.001pF(負荷開放相当)でピンクがC5=120pFの場合。 ・C5=0.001pF(負荷開放相当)の場合にオーバーシュートとアンダーシュートが出ているが、位相補正で消せる可能性はある。が、この程度なら問題ないのでそのままにする。 ・この応答波形から、727Aもどきの無負荷の場合のスルーレートは、2uSで1000Vは立ち上がり、立下っているので500V/uS以上である。 ・C5=120pFの場合は、途中で速度が変化するが、平均すれば8uSで700Vの立ち上がり、立下りであるからスルーレートは85.7/uSである。 ・理屈的には64.5V/uSのはずだが、それよりも大きい。何故か?は知らない。 |
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・次に、正弦波出力1,000Vp−p時の出力のFFT。 ・Total Harmonic Distortion=0.003527% ・優秀だ。 ・ちなみに私のA案及びC案の同程度の出力における歪率は、 A案 ・Total Harmonic Distortion=0.019272% C案 ・Total Harmonic Distortion=0.019304% ・そしてSRM−T8000もどきは、 ・Total Harmonic Distortion=0.003726% ・私のA案、C案はもとよりSRM−T8000を凌ぐ低歪率。 ・素晴らしい。 |
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・こちらは入力を0.265Vp−pとして出力を282Vp−p(要するに100Vr.m.s.)とした場合。 ・Total Harmonic Distortion=0.000984% ・ちなみに私のA案及びC案の同出力におけるシミュレーション上の歪率は、 A案 ・Total Harmonic Distortion=0.001413% C案 ・Total Harmonic Distortion=0.001046% ・そしてSRM-T8000もどき。 ・Total Harmonic Distortion=0.000975% ・この場合はSRM−T8000もどきにわずかに及ばない結果。 ・それにしても、私のA案、C案、そしてSRM−727Aもどきよりオープンゲイン、そしてNFB量は大分小さいのに、これらを凌ぐSRM−T8000もどきの低歪率は凄い。 |
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・先日某家電量販店に出向いて、後学のためにSRM−T8000を試聴した。 ・その出力に繋がっているのはSR−009とSR−009S。 |
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・駄耳なのでSRM−T8000の個性、特徴などを他と比較して述べられない。が、良い音である。ただSRM−727AやSRM−007tA5台分の60万円は参るね。 ・同じアンプでドライブされるSR−009とSR−009Sにはやや違いを感じた。SR−009で素晴らしく良い音なのだが、SR−009Sにはさわやかな風が加わり、より実在感、本物感が増す。SR−009Sは良いね。比べなければSR−009で良いのだが... |
(2018年9月29日)
その5の補足
・写真をさらに見ていて、そう言えば、と大事なことを思い出した。 ・それは、右上のT8000の写真では放熱器の左上に写っているダイオード。そして右下の727Aでは放熱器の左右下にそれぞれ写っているダイオードである。 ・それらダイオードの直近のTRは終段エミッタフォロアの電流制限型保護回路だろうと思うが、 ・このダイオードこそ、上の方で、私のB案やSRM−313のシミュレーションの検討で、シングルエミッタフォロアに容量が負荷となった場合、容量を充電する立ち上がりでは急速に容量を充電できるのに対し、立ち下がりではトランジスタがカットオフ状態になり、結果、容量の放電をアクティブに出来ず、負荷120pFの電位を急速に下げられないため、そのベース−エミッタ間に数百Vの逆電圧がかかってしまうという問題を解決するため、そのベース−エミッタ間に挿入すべきと考えたダイオードに違いない。 ・しかしながら、SRM−323AやSRM−252Sの実機ではこのダイオードが見つからないので、その考えは間違いかと思っていたのだが、SRM−T8000とSRM−727Aにはちゃんと取り付けてあるではないか。考えは正しかったようだ。 |
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・ということを確かめてみる。 ・まずはSRM−T8000もどきの当該ダイオードがない場合の10kHz方形波応答。 ・緑が出力波形、ピンクが終段Q7のベース電位波形、赤が終段Q12のベース電位波形。 ・そして問題なのが、青のQ7のベースとQ10のエミッタ間電位と、黄土色のQ12のベースとQ13ののエミッタ間の電位。 ・出力がプラスに立ち上がる際には、Q12、Q13側はマイナス側に立ち下がる側になるが、プッシュプル動作でないシングル動作のエミッタフォロアでは、信号の立下りで容量負荷の放電が間に合わず、動作がカットオフするだけでなく、Q12のベースとQ13のエミッタ間に通常1.数V程度のところに−300Vを超える逆バイアス電圧がかかってしまっている。 ・出力が立ち下がる際は今度はQ7、Q10側がマイナス側に立ち下がる側になるが、同じくQ7のベースとQ10のエミッタ間に−300Vを超える逆バイアス電圧がかかってしまっている。 ・これでは、シミュレーションでは壊れないが、実動作ではそれらのTRは壊れてしまう。 ・ので、この間にダイオードを挿入して、高電圧の逆バイアスからこれらのTRを保護する必要があるのではないか、と上の方で考えたのである。 |
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・それらのダイオードを挿入して同様に10kHz方形波応答を観る。 ・青のQ7のベースとQ10のエミッタ間電位も黄土色のQ12のベースとQ13のエミッタ間電位も、0V付近に張り付いて1本の線に重なっているが、拡大すると双方とも+1.5V、−0.7V以内となっており、これらTRにとって全く問題のない正常な状態となった。 ・緑の出力波形のオーバーシュート、アンダーシュートまで小さくなって綺麗な波形になっている。 ・これらのダイオード、D1,D2は要すれば保護回路だが、このようにシミュレーション結果にも影響するから、省略しないでシミュレーションの回路にも入れておくべきだね。 |
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・同じく、SRM−727Aもどきの当該ダイオードがない場合の10kHz方形波応答。 ・結果は同じだが、こちらは逆バイアスが−600Vを超えるものになっている。 |
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・それらのダイオードを挿入して同様に10kHz方形波応答を観る。 ・青のQ21のベースとQ19のエミッタ間電位も黄土色のQ21のベースとQ20のエミッタ間電位も、+1.5V、−0.7V以内であり、これらTRにとって全く問題のない状態となる。 ・緑の出力波形のオーバーシュート、アンダーシュートがちょっと出ているが、Q21、Q22のベース電位のオーバーシュート、アンダーシュートは、よりスパイクの少ない波形になっている。 ・SRM−727Aもどきについてもやはりこれらのダイオード、D1,D2は必要だ。 ・今回、このダイオードが実際にSRM−T8000やSRM−727Aに実装されていることが分かって良かった。 |
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・ここにダイオードを挿入することによって他の特性に影響は与えないだろうか。 ・と、可能性としては歪率が一番影響を受けるのではなかろうかと、ダイオードを挿入したSRM−T8000もどきで、入力を0.265Vp−pと、出力を282Vp−p(要するに100Vr.m.s.)の場合についてFFTを観る。と、 ・Total Harmonic Distortion=0.000975% ・全く同じだ。 ・念のために他も確認してみたが、D1,D2の挿入は他の特性には何も影響を与えない。 ・結論。 ・終段シングルエミッタフォロアのSTAXドライバーにはD1,D2は必須。 ・SRM−T8000にもSRM−727Aにも実装されていることが分かったし。 ・では、同じく終段シングルエミッタフォロアのSRM−323AやSRM−252Sにこのダイオードが実装されていないのは何故か? ・見落としただけか。(爆) |
(2018年10月1日)
・掲示板でgajiraさんから、海外のファンが実機を解析して起こしたSRM−T8000の回路図を紹介いただいたので、それによりSRM−T8000もどきのシミュレーション回路を書き直してみた。 ・基本は全く同じだが、さらに回路が具体的になった。 ・初段差動アンプとそのフォールデッドカスコード回路の定電流回路に温度補償のダイオード接続TRが加わっていること。2段目差動アンプの共通エミッタ側が定電流回路ではなかったこと。初段のフォールデッドカスコード回路と2段目のカスコード回路の電圧設定が抵抗分圧で行われていたこと。が、違いといえば違いだが、より具体的な回路図になったということかな。 ・そして今一つ。終段エミッタフォロアの定電流回路の定電圧部の温度補償に使われているTRだが、これが2SC5466ではなく、オンセミ(フェアチャイルド)のKSC5502Dというトランジスタであるらしいことだ。初めて知った。さらにサーチしてみるとSRM−353Xにも2SC5466に代わって起用されているよう。 ・さらに余計なことだが、SRM-353Xの回路は従来の313や323型の回路からT8000型の回路に変更になっているようだ。遂に2SC5466も2SA1968も尽きたのかもしれない。 ・さて、抵抗定数等については海外のファンの解析定数に基本的に従ったが、動作がおかしくなる定数などについては直したところがある。 |
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・この回路でのシミュレーションについては、これまでのシミュレーション結果とほぼ同じなので載せない。 ・が、一つだけ、入力を1kHz0.265Vp−pとして、出力282Vp−p(要するに100Vr.m.s.)の場合の歪率をFFTの結果で観ると、 ・Total Harmonic Distortion=0.000997% ・と、僅かに悪い結果となった。が、まぁこれもほぼ同じ。 |
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・海外のファンの方が実機を解析して起こしたSRM−T8000の回路図には、DCサーボ回路も載っている。ここまで解析するとは驚くが、早速Ltspiceの回路としてみた。 ・K式では同様の効果を有するものをオフセットコントロールと称しているが、あれも要するにDCサーボで、その呼称に倣うとこれもオフセットコントロール。 ・回路は、オフセット電圧をオペアンプで電圧増幅し、それを電流出力に変換し、ウィルソン・カレントミラーで同量の電流をアンプのフォールデッドカスコード部から吸い取ることにより、アンプのオフセット電圧を反対方向に制御し、オフセット電圧を限りなく0Vに近づけようとするものだ。 |
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・早速そのDCサーボ回路をSRM−T8000もどきに搭載し、そのゲイン−周波数特性を観る。 ・DCサーボの効果を観るため低域側のレンジを0.0001Hzまで伸ばしたのだが、そのDCサーボの効果でオープンゲイン(赤)が10Hz程度から低域に向けて6dB/octで低下し、0.0001Hzでは0dB以下となっている。クローズドゲイン(緑)も当然オープンゲインに従った特性になる。 ・K式におけるオフセットコントロールの効果と同じ。呼称が違うだけだから当然。 ・で、このDCサーボ回路は凄く強力だ。このシミュレーション動作で、出力OUT1もOUT2もそのオフセットは0.01mV。 |
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・なお、いつものことだが、以上はただのシミュレーションである。信じてはいけない。 |
(2018年10月3 日)
その6(SRM−T2もどき)
・掲示板でgajiraさんから紹介頂いた、海外のファンが実機を解析して起こしたというSTAXのイヤースピーカードライバーの回路図に、あの幻のSRM−T2の回路図があるのだった。 ・最大出力630Vr.m.s./1kHzという超ド級ドライバーとはどういう回路だったのか興味津々。 ・ようやくLtspiceで見慣れた半導体式の回路図とすることができた。と言っても、適宜変更しているところがあるのでそのままではない。 ・初段6DJ8だか7308だか(シミュレーションではECC88で代用)の真空管カスコード接続、定電流負荷の差動アンプの出力を、2SK216のソースフォロアと740Vのアクティブバッテリー回路(シミュレーションでは740Vのツェナーダイオードをでっち上げて代用)でレベルシフトして、2段目がこのアンプで最大の電圧ゲインを稼いでいる2SK216の定電流負荷の差動アンプ、そして2段目出力を2SJ79のソースフォロア経由で、終段の定電流負荷の三極管接続6CA7(EL34)をドライブするという、他のSTAXのイヤースピーカードライバーには見られない唯一無二の回路構成だ。 ・終段のEL34は一見グリッド接地のカスコード回路のように見えるが、そうではないね。グリッドが接地はされているが、カソード-グリッド間電圧がカソード側からドライブされ、EL34はカソード接地回路同様の電圧ゲイン(20dB程度)を発生している。K式に言う同相GGAのようなもの。 ・初段とその出力のレベルシフト回路、2段目差動アンプと終段は、それぞれDC帰還回路が組み込まれ出力電位が適切なものになるよう(終段は勿論0V)組んである。 ・そしてそれら帰還回路だけではなく、このシミュレーション回路では省略したが、実機にはSRM−T8000とほぼ同様のDCサーボ回路も搭載されていたようだ。 ・色々と勉強になる回路だ。 ・ちなみにこのシミュレーション回路では終段EL34のプレート動作点電流が10mAとなっている。実機は8mAだったらしいが。 |
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・早速そのゲイン-周波数特性。 ・赤がオープンゲイン、緑がクローズドゲイン、青がループゲイン≒NFB量。 ・低域でオープンゲインは84dB、クローズドゲインは59.5dB、ループゲインは24dBというLtspiceの占い結果だ。 ・ちょっと疑義があるのだが、今のところLtspiceの出す結果がこうなのでこういうことにしておこう。 |
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・続いて、1kHz正弦波で入力電圧を0.9V、0.98V、1Vp-pとしたパラメトリック解析で最大出力を観る。 ・中途半端な0.98V入力を加えてあるのは、限界を探った結果。 ・入力電圧1Vでは出力電圧(緑)のピークが飽和し、イヤースピーカーに見立てた負荷C1(120pF)に流れる電流波形(ピンク)が乱れており、限界に達している。 ・入力電圧0.98Vでピーク±920Vで出力され、負荷C5に流れる電流波形も正常であることから、1kHz正弦波での出力限界は±920Vp−p=650.5Vr.m.s.である。 ・SRM-T2の定格は、最大出力電圧:630V r.m.s./1kHzであるから、このもどき回路、それらしい。 ・終段の電源電圧が±500Vだとこれぐらいの出力が得られることになるが、まぁ、素人には触れられない世界だ。 |
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・今度は、20kHz正弦波で入力電圧を0.5V、0.55V、0.6Vp-pとしたパラメトリック解析で20kHz正弦波の最大出力を観る。 ・入力電圧0.6Vでは出力電圧(緑)のピークが飽和し、イヤースピーカーに見立てた負荷C1(120pF)に流れる電流波形(青)も乱れており、限界に達している。飽和電圧は±554Vだ。 ・ここでは終段EL34のプレート電流(ピンク)もあわせて表示してみたのだが、これも入力0.6Vでは乱れてしまっている。 ・入力電圧0.55Vでピーク±510Vで出力され、負荷C1に流れる電流波形も正常であることから、20kHz正弦波での出力限界は±510Vp−p=360.6Vr.m.s.程度であろう。 ・終段動作点10mAからすると、20kHz正弦波ではもう少し出力が得られても良いはずだが、そこまで行っていない。 |
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・次に、±0.6Vの10kHz方形波を入力した場合の出力波形を観る。 ・負荷C1=0.001pF(負荷開放相当)と120pFの場合のパラメトリック解析。 ・緑が出力波形、ピンクと赤はOUT1とOUT2の出力波形。 ・どれも立立上がり、立下りが早いのがC1=0.001pF(負荷開放相当)の場合で、立ち上がり、立下りに時間を要している方がC1=120pFの場合。 ・オーバーシュートとアンダーシュートはこの程度ならまぁよいか。 ・この応答波形から、T2もどきの無負荷の場合のスルーレートは、2uSで1000Vは立ち上がり、立下っているので500V/uS以上である。 ・C1=120pFの場合は、平均的に10uSで900Vの立ち上がり、立下りであるからスルーレートは90V/uS程度である。 ・理屈的には83.3V/uSだが、まぁそんなもの。 |
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・正弦波0.98Vp-p入力、出力±920Vp-p=1,840Vp−p時の出力のFFT。 ・結果、 ・Total Harmonic Distortion=0.001462% ・この大出力でこの低歪率。本当か? ・右でも高調波が凄いように見えるが。 ・が、縦軸のレベルを観るとそれらのレベルは低いのだ。 ・特徴としては、これまでの私のA案、C案、SRM−727Aもどき、そしてSRM−T8000もどきに比較すると、2次高調波のレベルが大きいように見える。終段真空管のせいか。 |
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・こちらは入力を0.15Vp−pとして出力を282Vp−p(要するに100Vr.m.s.)とした場合。 ・Total Harmonic Distortion=0.000845% ・ちなみに私のA案、C案、そしてSRM−727Aもどき、SRM−T8000もどきの同出力におけるシミュレーション上の歪率は、 A案 ・Total Harmonic Distortion=0.001413% C案 ・Total Harmonic Distortion=0.001046% SRM−727Aもどき ・Total Harmonic Distortion=0.000984% SRM-T8000もどき。 ・Total Harmonic Distortion=0.000975% ・最良の結果だ。 ・が、右を観るとちょっと本当かなという気もするけどね。 |
(2018年10月8日)
その7(Blue Hawaiiもどき)
・海外で著名なBlue Hawaiiのもどき。 ・その回路図(基本回路図かな?)はネットで検索すると出てくるので、早速LTspiceで自分で理解しやすく描いてみるとこう。 ・ただし、位相補正を加えている。 ・基本的に、これはSTAX純正のSRM−T1とSRM−T2をドッキングしたものだね。 ・2段目差動アンプの2SK216の動作電流は10mAとSRM−T2と同じだが、終段のEL34の動作電流は20mAとSRM−T2の2倍も流し、そのため終段の電源電圧をSRM−T2の±500Vに対して±400Vに下げたという感じ。 |
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・そのゲインー周波数特性。 ・上から、赤がオープンゲインで、低域で124.5dB。黄土色が2段目差動アンプ出力までのオープンゲインで低域で105dB。青がループゲインで低域で64.6dB。緑がクローズドゲインで低域で60dB。ピンクが初段差動アンプの出力までのオープンゲインで低域で39.5dB。 ・だから、オープンゲインは、初段で39.5dB、2段目で65.5dB、終段で19.5dB稼いでいるということになる。 |
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・次に1kHz正弦波応答なのだが、Blue Hawaiiもどきの回路図に変更を加える。 ・終段の定電流回路を定電流源にしたのはシミュレーションの収束性を良くするため。 ・2段目の2SK216差動アンプのマイナス電源を終段より60V低い−460Vにしたのは、2段目差動アンプ出力で終段EL34をマイナス側に十分にドライブするため。 ・ここにSRM−T2の回路を持ってくるなら、SRM−T2と同様に終段EL34を十分にドライブ出来るような電圧配分をしないともったいない。 |
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・で、入力電圧0.5V、0.6V、0.7V、0.71Vp−pの1kHz正弦波入力でその応答波形を観る。 ・0.71Vp−pを加えてあるのは限界を探った結果。 ・緑が出力電圧。赤と青は各相の出力電圧。ピンクはイヤースピーカーに見立てた負荷C1(120pF)に流れる電流波形。入力0.7Vp−pまではどれも正常だが、0.71Vp−p入力ではピンクの電流波形に乱れが生じており、限界を超えたことが分かる。 ・したがって、入力電圧0.7Vでピーク±700Vで出力され、負荷C1に流れる電流波形も正常であることから、1kHz正弦波での出力限界は±700Vp−p=495Vr.m.s.である。 ・SRM-727Aもどきが704Vp−p=497.8Vr.m.s.であったから、それよりもちょっと小さい。のは、終段真空管EL34にはそれなりの飽和電圧が必要だからだろう。 |
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・ちなみに2段目の2SK216差動アンプのマイナス電源を終段と同じ−400Vにして同様に観ると、 ・まず、グラフの下段だが、出力電圧波形(緑)やイヤースピーカーに見立てた負荷C1(120pF)に流れる電流波形(ピンク)は正常のように見えるが、各相の出力は、マイナス側では−240Vで飽和し、プラス側がその分を補おうと伸びあがった波形になっている。NFBが働く効果だろう。 ・が、各相のプラス側のピークでは電源電圧400Vを超えるものとなっており正常ではない。 ・グラフの上段がその原因を示したものだが、2SJ79のソース電位=EL34のカソード電位の推移を観たもの。 ・各相の出力電圧と同じ形をしているが、それがマイナス側で−389Vで飽和してそれ以上下げられなくなっているのだ。 ・これは2段目差動アンプのマイナス側の電源電圧を終段と同じにしてあるため、2段目差動アンプ2SK216のドレイン電圧がそれ以下に下がれないのだ。 |
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・次に、入力電圧0.5V、0.6V、0.73V、0.74Vp−pの20Hz正弦波入力でその応答波形を観る。 ・0.73V、0.74Vp−pを加えてあるのは限界を探った結果。 ・結果、入力0.73Vp−pまでは出力電圧波形(緑)ほか正常であるが、入力0.73Vp−pではイヤースピーカーに見立てた負荷C1(120pF)に流れる電流波形(ピンク)にリプルが生じ限界に到達していることが分かる。 ・したがって、入力電圧0.73Vでピーク±700Vで出力され、負荷C1に流れる電流波形も正常であることから、20kHz正弦波での出力限界は±700Vp−p=495Vr.m.s.と、1kHz正弦波の場合と全く同じだ。 ・終段に20mAも流しているので、それによるスルーレート=20mA/120pF=166.7V/uSに伴う限界に達する前に電源電圧による限界に達するため、20kHz正弦波でも1kHz正弦波に同じ出力限界となっている訳。 ・ただ、何故か20kHzでのゲインが1kHzより僅かに小さくなっている。何故か?知らない。 |
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・次に、±0.4Vの10kHz方形波を入力した場合の出力波形を観る。 ・負荷C1=0.001pF(負荷開放相当)と120pFの場合のパラメトリック解析。 ・緑がC1=0.001pF(負荷開放相当)の場合で、ピンクがC1=120pFの場合。 ・C1=120pFの場合の波形にアンダーシュートとリンギングが見られる。位相補正がいまいちなのかな。 ・C1=0.001pFの場合も120pFの場合も立ち上がり、立下りのスピードに違いはない。出力段に20mAの電流を流し、それによるスルーレートが166.7V/uSなので、この場合のスルーレートは終段ではなく、それ以前の段で規定されているからだ。 |
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・これは入力を0.14Vp−pとして出力を282Vp−p(要するに100Vr.m.s.)とした場合のFFT。 ・Total Harmonic Distortion=0.000829% ・ちなみに私のA案、C案、そしてSRM−727Aもどき、SRM−T8000もどき、SRM−T2もどきの同出力におけるシミュレーション上の歪率は、 A案 ・Total Harmonic Distortion=0.001413% C案 ・Total Harmonic Distortion=0.001046% SRM−727Aもどき ・Total Harmonic Distortion=0.000984% SRM-T8000もどき。 ・Total Harmonic Distortion=0.000975% SRM=T2もどき ・Total Harmonic Distortion=0.000845% ・最良の結果。 ・本当かな。 |
SRM−T2のオマージュ
・この際、SRM−T2のオマージュ。 ・が、むやみに大出力を追ってもしょうがないので、現実的なものを考える。 ・終段の電源電圧はSRM−007tAやSRM−727A、SRM−T8000とほぼ同じの±360Vとし、それに前段用の±15V電源を用意し、前段マイナス側は終段の−360Vにその−15Vを乗せて作る。 ・初段には、ジャンクボックスに眠っている半導体PチャンネルデュアルFET2SJ109を起用し、従ってフォールデッドカスコードは必要ないのでただのカスコード回路とし、その分回路を簡素化する。その動作電流は1.5mA。 ・要すれば、SRM−T2のように初段にも真空管を起用すると、私の様な素人には手が負えなくなる。(爆) ・2段目はSRM−T2と同様の2SK216の差動アンプとする。が、動作電流は1/2以下の4.5mA。 ・終段はSRM−T2そのもの(EL34Tは三極管接続のEL34)で、動作電流は9mA。電源電圧が低いので定電流回路の規模も小さく出来る。 ・これなら私の様な素人にも作れるんじゃなかろうか。という設計。 |
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・そのゲインー周波数特性。 ・負荷であるC3を0.001pF(無負荷に相当)と120pFとした場合のパラメトリック解析。 ・上から、赤がオープンゲインで、低域で123.5dB。黄土色が2段目差動アンプ出力までのオープンゲインで低域で104dB。青がループゲインで低域で63.6dB。緑がクローズドゲインで低域で60dB。ピンクが初段差動アンプの出力までのオープンゲインで低域で34.3dB。 ・だから、オープンゲインは、初段で34.3dB、2段目で69.7dB、終段で19.5dB稼いでいるということになる。 ・位相補正を特に行っていないが、うまい具合に素直な特性となった。 ・2段目差動アンプに用いた2SK216のCrss=2pFで上手く調和しているのかな。 |
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・入力電圧0.6V、0.6V、0.65V、0.67V、0.68Vp−pの1kHz正弦波入力でその応答波形を観る。 ・緑が出力電圧。ピンクはイヤースピーカーに見立てた負荷C3(120pF)に流れる電流波形。 ・入力0.67Vp−pまではどれも正常だが、0.68Vp−p入力ではピンクの電流波形に乱れが生じており、限界を超えたことが分かる。 ・したがって、入力電圧0.67Vでピーク±668Vで出力され、負荷C3に流れる電流波形も正常であることから、1kHz正弦波での出力限界は±668Vp−p=472Vr.m.s.である。 ・同じ終段電源電圧のSRM-727Aもどきが704Vp−p=497.8Vr.m.s.であったから、それよりもちょっと小さい。のは、終段真空管EL34にはそれなりの飽和電圧が必要だからだろうが、これで十分以上の出力限界だ。 |
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・次に、入力電圧0.4V、0.6V、0.51V、0.52Vp−pの20Hz正弦波入力でその応答波形を観る。 ・0.51V、0.52Vp−pを加えてあるのは限界を探った結果。 ・結果、入力0.51Vp−pまでは出力電圧波形(緑)ほか正常であるが、入力0.52Vp−pではイヤースピーカーに見立てた負荷C3(120pF)に流れる電流波形(ピンク)がピークで扁平となり限界に到達していることが分かる。 ・したがって、入力電圧0.51Vでピーク±504Vで出力され、負荷C3に流れる電流波形も正常であることから、20kHz正弦波での出力限界は±504Vp−p=356Vr.m.s.である。 ・終段の動作電流が9mAだが、帰還回路にこの出力で1.68mA分流するので、負荷C3に流せる電流は7.32mA。よってスルーレート=7.32mA/120pF=61V/uS。よって、20kHzにおける最大出力電圧は61/(π*20kHz)=±481Vp−p=340Vr.m.s.。 ・ほぼ理屈通り。 |
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・±0.5Vの10kHz方形波を入力した場合の出力波形を観る。 ・負荷C3=0.001pF(負荷開放相当)と120pFの場合のパラメトリック解析。 ・緑がC3=0.001pF(負荷開放相当)の場合で、ピンクがC3=120pFの場合。 ・C3=120pFの場合の波形にオーバーシュートとアンダーシュートが見られる。位相補正がいまいちなのかもしれないが、基本素直な応答となっている。 ・C3=0.001pF(無負荷相当)の場合は3.6uSで1000V立ち上がり、立ち下がっているのでスルーレートは278V/uSである。 ・C1=120pFの場合は15uSで1000V立ち上がり、立下がっているので、そのスルーレートは66.7V/uSである。終段動作電流8mAの場合の理論スルーレート値に一致した。 ・まぁ、良いところだね。 |
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・入力を0.14Vp−pとして出力を282Vp−p(要するに100Vr.m.s.)とした場合のFFT。 ・Total Harmonic Distortion=0.000859% ・ちなみに私のA案、C案、そしてSRM−727Aもどき、SRM−T8000もどき、SRM−T2もどき、Blue Hawaiiもどきの同出力におけるシミュレーション上の歪率は、 A案 ・Total Harmonic Distortion=0.001413% C案 ・Total Harmonic Distortion=0.001046% SRM−727Aもどき ・Total Harmonic Distortion=0.000984% SRM-T8000もどき。 ・Total Harmonic Distortion=0.000975% SRM=T2もどき ・Total Harmonic Distortion=0.000845% Blue Hawaiiもどき ・Total Harmonic Distortion=0.000829% ・Blue Hawaiiもどき、SRM=T2もどきに次ぐ結果。 ・良さ気だ。 |
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・ところで、右も入力を0.14Vp−pとして出力を282Vp−p(要するに100Vr.m.s.)とした場合のFFTである。 ・上でSRM−T2もどきやBlue HawaiiもどきでもFFTがこのようにノイズまみれの様な結果になった。 ・その原因は何かと思っていたのだが、要するに、真空管を起用してあるので動作が安定してからと考えて、測定開始まで1000u〜2000u秒の間を置く設定にしていたのだが、そうするとこういう測定結果になるということだった。 ・両方見比べると、上は低域−90dBまでで測定限界に達しているのだが、下ではそれが−150dBまで下がっているのだ。 ・それで上では見えなかった極低レベルの歪まで下では見えているということのようだ。 ・FFTのTotal Harmonic Distortionの数値は、どちらも同じ値である。 |
(2018年11月4日)
SiC-MOSで DRIVER UNIT for STAX EARSPEAKERS を製作
・アメリカから逆輸入したSCT2H12AZ。 ・真空管も悪くないが、最新素子であるSiC-MOSも良いのではなかろうか。 ・耐圧1,700V、許容損失35W、最大ドレイン電流3.7A。ロームのパワーデバイス、SiC-MOSの中では最も控えめの性能。今回の用途にはこれでも過剰性能だが、耐圧1.700Vは、高圧動作が必要なSTAXのイヤースピーカードライバー用には最適。 ・問題は電極間容量だが、これもSCT2H12NZはCiss=184pF、Coss=16pF,Crss=6pFと、パワーデバイスとしては大分小さくなっている。 ・これなら良さ気では。 ・EL34は後の楽しみとし、現代素子のSiC-MOSを起用して、簡素にDRIVER UNIT for STAX EARSPEAKERSを作ってみてはどうか。 |
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・その静特性を観る。 ・データシートには載っていない、このデバイスからすれば極低電流領域のVds−Vgs−Id特性。 ・今回使用する領域だ。 ・見事な五極管特性。動作電流にする9mA近辺を拡大して計算してみると、出力インピーダンスは6MΩ程度。普通ならカスコード接続にしないと得られないレベル。 ・これは良い。 |
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・で、回路はこう。 ・出力インピーダンスの大きさと電極間容量の小ささに期待して、SRM−T2オマージュの回路の初段と2段目だけ、といった回路。オマージュ回路終段の定電流回路は2段目の定電流回路に移植。 ・よって、初段のJ1、J2の動作電流は1.5mA、2段目のSCT2H12NZはそれぞれ9mAとなる。 ・初段の負荷が3.9kΩから8.2kΩとなっている。のは、SCT2H12NZのゲートバイアス電圧(スレッシュホールド電圧)が大きいため。 ・果たして、こういうパワーデバイスを起用して、所要のスルーレートや周波数特性が確保出来るかどうか。 ・要すればSCT2H12NZの電極間容量がどう効いてくるか。 ・それが問題だ。 |
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・ゲイン-周波数特性。 ・イヤースピーカーに見立てたC3を0.01pF(無負荷相当)と120pFとしたパラメトリック解析。 ・どれも高域で伸びている方がC3=0.01pFの場合だが、上から、赤がオープンゲインで低域で114dB、緑がクローズドゲインで低域で60dB、青がループゲインで低域で54dB、ピンクが初段のオープンゲインで低域で41dB。 ・したがって、オープンゲインは、初段で41dB、2段目で73dB稼いでいるということになる。 ・特に位相補正をしなくとも素直な特性になっている。 ・良さ気。 ・が、ちょっと気になるのは、クローズドゲインが2kHzあたりから微妙に下がり始め20kHzではC3=0.01pF(無負荷相当)でも△0.37dB、C3=120pFでは△0.9dBとなっているところだ。 ・これは、SCT2H12NZの電極間容量に対する措置を特に講じていないためだが、シンプルさも捨てがたいので、この程度なら許容しても良いか。 |
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・入力電圧0.65V、0.7V、0.71V、0.75Vp−pの1kHz正弦波入力でその応答波形を観る。 ・0.71Vp−pを加えてあるのは限界を探った結果。 |
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・下のグラフ赤が出力電圧、ピンクがイヤースピーカーに見立てたC3=120pFに流れる電流値、上のグラフの緑と青は各相の出力電圧。 ・入力0.71Vp−pまではどれも正常だが、0.75Vp−p入力ではピンクの電流波形が0A付近でかぎ型になるとともに、出力電圧はどれもピークで飽和しており、限界を超えたことが分かる。 ・したがって、入力電圧0.71Vでピーク±690Vで出力され、負荷C3に流れる電流波形も正常であることから、1kHz正弦波での出力限界は±690Vp−p=488Vr.m.s.である。 ・SRM-727Aもどきが704Vp−p=497.8Vr.m.s.であったから、それよりもちょっと小さい。 ・のは、SCT2H12NZの所要ゲートバイアス電圧が上の特性図で見たようにId=9mAでは4.1V程度と大きいのと、その負荷の定電流回路の電圧設定に6Vの定電圧ダイオードを使っているためだが、上のグラフの通り、各相出力はプラスマイナスとも350V弱で対称に飽和しており、これで丁度良い設定だ。 |
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・次に、入力電圧0.5V、0.6V、0.64V、0.7Vp−pの20Hz正弦波入力での応答波形。 ・0.64Vp−pを加えてあるのは限界を探った結果。 |
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・結果、入力0.64Vp−pまでは出力電圧波形(赤)、C3に流れる電流波形(ピンク)とも正常であるが、入力0.7Vp−pではC3に流れる電流波形(ピンク)がピークで扁平となり限界を超えていることが分かる。 ・したがって、入力電圧0.64Vでピーク±590Vで出力され、負荷C3に流れる電流波形も正常であることから、20kHz正弦波での出力限界は±590Vp−p=417Vr.m.s.である。 ・終段の動作点電流が9mAなので、それによるスルーレート=9mA/120pF=75V/uSである。したがって、20kHzで出力可能なp−p電圧は75V/(π*20kHz)=1,194Vp−pであるから、=±597Vp−pが正弦波20kHzでの限界出力である。 ・いいところだ。 |
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・次に、±0.6Vの10kHz方形波を入力した場合の出力波形。 ・負荷C3=0.01pF(負荷開放相当)と120pFの場合のパラメトリック解析。 |
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・下のグラフ緑がC3=0.01pF(負荷開放相当)の場合で、ピンクがC3=120pFの場合。 ・上のグラフは各相の出力波形で立ち上がり下がりが早い方がC3=0.01pFの場合で、遅い方がC3=120pFの場合。 ・なかなか綺麗な応答波形だ。 ・C3=0.01pFの場合、10uSで1,100Vは立ち上がり、立ち下がっているので、スルーレートは110V/uS程度はある。C3=120pFの場合は10uSで782V立ち上がり、立下がっているので、スルーレートは78.2V/uS程度となるが、ちょうど理屈の75V/uSどおりだ。 ・無負荷時のスルーレートがイヤースピーカ負荷時(C3=120pF)より高速になっていることから、電極間容量がそれなりにあるパワーデバイスSCT2H12NZを素で起用したこのシンプルな回路のドライバーは、十分な適性があるということになる。(2段目の動作電流を14mA以上にするとそうは言えなくなるが。) ・良かった。 |
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・次に入力を0.14Vp−p1kHz正弦波として出力を282Vp−p(要するに100Vr.m.s.)とした場合のFFT。 |
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・測定まで1000u秒の間をおいたので、ノイズだらけのようなグラフになるが、測定限界が下がっただけ。というのは上で観た通り。 ・Total Harmonic Distortion=0.002019% ・ちなみに私のA案、C案、そしてSRM−727Aもどき、SRM−T8000もどき、SRM−T2もどき、Blue Hawaiiもどき、SRM−T2のオマージュの同出力におけるシミュレーション上の歪率は、 A案 ・Total Harmonic Distortion=0.001413% C案 ・Total Harmonic Distortion=0.001046% SRM−727Aもどき ・Total Harmonic Distortion=0.000984% SRM-T8000もどき。 ・Total Harmonic Distortion=0.000975% SRM=T2もどき ・Total Harmonic Distortion=0.000845% Blue Hawaiiもどき ・Total Harmonic Distortion=0.000829% SRM−T2のオマージュ ・Total Harmonic Distortion=0.000859% ・十分低い。が、一番悪い。(爆) |
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・これは先にアメリカから逆輸入してあったSCT2450KE。一番右は比較のために置いたSCT2H12NZ。 ・こちらは、耐圧は1,200VとSCT2H12NZより低いが、許容損失85W、最大ドレイン電流10Aと、SCT2H12NZよりハイパワーな性能だ。 ・が、電極間容量は、Cissは463pFと大きめだが、Coss=21pF、そして一番重要なCrss=4pFと、CrssはSCT2H12NZの2/3の小ささなのである。 ・この電極間容量なら、これも今回のSTAX DRIVERの回路に使えるのではないか。 |
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・その静特性を観る。 ・SCT2H12NZと同様に、データシートには載っていない、今回使用する極低電流領域のVds−Vgs−Id特性。 ・案外違うものだ。gmはSCT2H12NZより大きいが、出力インピーダンスが無限大と言えるようなSCT2H12NZとは違って、Id=9mA付近で出力インピーダンスは140kΩ〜150kΩ程度。出力インピーダンスは負荷にパラになるのと同じだから、これだとgmの大きさを相殺して、かえってオープンゲインは小さくなるかも。 |
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・回路は勿論こう。 ・2段目のSCT2H12NZをSCT2450KEに変更しただけ。 ・ただし、SCT2450KEの所要ゲートバイアス電圧がより小さいので、R9の値が少し大きくなっている。 |
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・ゲイン-周波数特性。 ・イヤースピーカーに見立てたC3を0.01pF(無負荷相当)と120pFとしたパラメトリック解析。 ・どれも高域で伸びている方がC3=0.01pFの場合だが、上から、赤がオープンゲインで低域で107dB、緑がクローズドゲインで低域で60dB、青がループゲインで低域で47dB、ピンクが初段のオープンゲインで低域で41dB。 ・したがって、オープンゲインは、初段で41dB、2段目で66dB稼いでいるということになる。 ・SCT2H12NZを起用した場合に比較して、オープンゲインが7dB小さい。結果ループゲインも7dB小さい。やはり、SCT2450KEの出力インピーダンスの小ささが効いてオープンゲインが小さくなった。 ・が、これも素直な特性だ。 ・し、クローズドゲインも20kHz超まで低域と同様なゲインが得られているように見える。 ・拡大してみると20kHzではC3=0.01pF(無負荷相当)で△0.06dB、C3=120pFでも△0.14dBである。 ・Crssが4pFと小さいこととゲインが7dB 小さいことが相乗して効いているのかな。 ・これならこのシンプルな回路で良いね。 |
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・入力電圧0.65V、0.7V、0.71V、0.75Vp−pの1kHz正弦波入力でその応答波形を観る。 ・0.71Vp−pを加えてあるのは限界を探った結果。 |
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・下のグラフ緑が出力電圧、ピンクがイヤースピーカーに見立てたC3=120pFに流れる電流値、上のグラフの赤と青は各相の出力電圧。 ・入力0.71Vp−pまではどれも正常だが、0.75Vp−p入力ではピンクの電流波形が0A付近でかぎ型になるとともに、出力電圧はどれもピークで飽和しており、限界を超えたことが分かる。 ・したがって、入力電圧0.71Vでピーク±690Vで出力され、負荷C3に流れる電流波形も正常であることから、1kHz正弦波での出力限界は±690Vp−p=488Vr.m.s.である。 ・と、SCT2H12NZを用いた場合と全く同じ。 |
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・次に、入力電圧0.5V、0.55V、0.6Vp−pの20Hz正弦波入力での応答波形。 |
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・結果、入力0.55Vp−pまでは出力電圧波形(緑)、C3に流れる電流波形(ピンク)とも正常であるが、入力0.6Vp−pではC3に流れる電流波形(ピンク)がピークで扁平となり限界を超えていることが分かる。 ・したがって、入力電圧0.55Vでピーク±528Vで出力され、負荷C3に流れる電流波形も正常であることから、20kHz正弦波での出力限界は±528Vp−p=373Vr.m.s.である。 ・終段の動作点電流が9mAなので、それによるスルーレート=9mA/120pF=75V/uSであるから、20kHzで出力可能なp−p電圧は75V/(π*20kHz)=1,194Vp−p=±597Vp−pが正弦波20kHzでの限界出力である。 ・SCT2H12NZを用いた場合はこれがほぼ理屈通りの±590Vp−p=417Vr.m.s.であったのに比較しても大分小さい。 ・要はスルーレートが小さくなっているからだが、何故? |
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・そこで、±0.6Vの10kHz方形波を入力した場合の出力波形。 ・負荷C3=0.01pF(負荷開放相当)と120pFの場合のパラメトリック解析。 |
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・下のグラフ緑がC3=0.01pF(負荷開放相当)の場合で、ピンクがC3=120pFの場合。 ・上のグラフは各相の出力波形で立ち上がり下がりが早い方がC3=0.01pFの場合で、遅い方がC3=120pFの場合。 ・C3=120pFの場合の応答波形にオーバーシュート、アンダーシュートが出ているが、まぁ綺麗な応答波形だ。 ・C3=0.01pFの場合の場合、10uSで1,100Vは立ち上がり、立ち下がっているので、スルーレートは110V/uS程度あるのはSCT2H12NZを用いたものと同じだ。 が、C3=120pFの場合は10uSで650V程度の立ち上がり、立下がりなので、スルーレートは65V/uS程度となっている。 ・やはり理屈の75V/uSに届かない。 ・何故スルーレートがこうなるのだろうか? ・わからん。(爆) |
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・次に入力を0.14Vp−p1kHz正弦波として出力を282Vp−p(要するに100Vr.m.s.)とした場合のFFT。 |
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・測定まで1000u秒の間をおいたので、ノイズだらけのようなグラフになるが、それは測定限界が下がっただけ。というのは上で観た通り。 ・Total Harmonic Distortion=0.002948% ・SCT2H12NZと用いたものが ・Total Harmonic Distortion=0.002019% ・これでも十分に低いが、それよりやや悪い結果だ。 |
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・と、SCT2H12NZを用いてもSCT2450KEを用いてもシンプルな回路でとても良い。 ・と思うのだが、SCT2H12NZを用いたものはクローズドゲインが20kHzで低域に対してやや落ちること、SCT2450KEを用いたものは、何故か負荷120pFの場合のスルーレートが落ちるし、FFTの歪率もやや劣ることがちょっと気になる。 ・ので、SCT2H12NZを用いて、その場合でも20kHzのクローズドゲインが低域に対して落ちないものとなるよう改善を試みてみる。 ・その要因はSCT2H12NZの電極間容量だから、その影響が小さくなる回路にすれば良いだろう。 ・手法はいくつか考えられるが、極力シンプルにということで、右のように初段と2段目の間に2SC5466のエミッタフォロアを挿入して、より低インピーダンスで2段目のSCT2H12NZをドライブすることでどうか。また、こうすると初段動作にSCT2H12NZの電極間容量の影響もなくなるだろう。 |
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・ゲイン-周波数特性。 ・イヤースピーカーに見立てたC3を0.01pF(無負荷相当)と120pFとしたパラメトリック解析。 ・どれも高域で伸びている方がC3=0.01pFの場合だが、上から、赤がオープンゲインで低域で114dB、緑がクローズドゲインで低域で60dB、青がループゲインで低域で54dB、ピンクが初段のオープンゲインで低域で41dBと、SCT2H12NZを用いたシンプル型と全く同じ。 ・したがってこの場合も、オープンゲインは、初段で41dB、2段目で73dB稼いでいるということになる。 ・クローズドゲインは、周波数20kHzではC3=0.01pF(無負荷相当)の場合は低域に比して△0.008dB、C3=120pFでも△0.095dBとなっており全く問題なくなった。 ・また、ピンクの初段のオープンゲインがシンプル型に比してかなり高域まで伸びている。これは間に入れたエミッタフォロアにより、初段がSCT2H12NZの電極間容量の影響を受けなくなったためだろう。 ・そのためだろうが、この場合、回路図のC1,C2の位相補正を帰還回路に入れることが必要になった。 ・シミュレーションではC1,C2がないと無負荷の場合のクローズドゲイン(緑)の800KHz付近にピークを生じて上手くない。 ・そのピークは、C1,C2=0.5pFで消滅する。ので、倍の1pFをパラに入れておこう。 |
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・入力電圧0.65V、0.7V、0.71V、0.75Vp−pの1kHz正弦波入力でその応答波形を観る。 ・0.71Vp−pを加えてあるのは限界を探った結果。 |
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・下のグラフ緑が出力電圧、ピンクがイヤースピーカーに見立てたC3=120pFに流れる電流値、上のグラフの赤と青は各相の出力電圧。 ・入力0.71Vp−pまではどれも正常だが、0.75Vp−p入力ではピンクの電流波形が0A付近でかぎ型になるとともに、出力電圧はどれもピークで飽和しており、限界を超えたことが分かる。 ・したがって、入力電圧0.71Vでピーク±690Vで出力され、負荷C3に流れる電流波形も正常であることから、1kHz正弦波での出力限界は±690Vp−p=488Vr.m.s.。 ・各相出力もプラスマイナスとも350V弱で対称に飽和しており、良い設定。 ・と、シンプル型と全く同じ。 |
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・次に、入力電圧0.5V、0.6V、0.61V、0.65Vp−pの20Hz正弦波入力での応答波形。 ・0.61Vp−pを加えてあるのは限界を探った結果。 |
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・結果、入力0.61Vp−pまでは出力電圧波形(緑)、C3に流れる電流波形(ピンク)とも正常であるが、入力0.65Vp−pではC3に流れる電流波形(ピンク)がピークで扁平となり限界を超えていることが分かる。 ・したがって、入力電圧0.61Vでピーク±590Vで出力され、負荷C3に流れる電流波形も正常であることから、20kHz正弦波での出力限界は±590Vp−p=417Vr.m.s.である。 ・と、SCT2H12NZを用いたシンプル型と同じだが、違いが一点。 ・シンプル型は入力0.64p−pでピーク±590Vが出力されたのだが、こちらは入力0.61Vp−pでピーク±590Vが出力されている。 ・のは、20kHzにおける電圧ゲインが大きくなっているから。 ・シンプル型は、590/0.64=921.875=59.29dB ・こちらは、590/0.61=967.213=59.71dB ・と、0.42dB程度こちらの電圧ゲインが大きい。 ・回路構成で対策した効果だ。 |
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・次に、±0.6Vの10kHz方形波を入力した場合の出力波形。 ・負荷C3=0.01pF(負荷開放相当)と120pFの場合のパラメトリック解析。 |
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・下のグラフ緑がC3=0.01pF(負荷開放相当)の場合で、ピンクがC3=120pFの場合。 ・上のグラフは各相の出力波形で立ち上がり下がりが早い方がC3=0.01pF(負荷開放相当)の場合で、遅い方がC3=120pFの場合。 ・これも綺麗な応答波形だ。 ・C3=0.01pFの場合(負荷開放相当)の場合、2uSで1,000Vは立ち上がり、立ち下がっているので、スルーレートは500V/uS以上である。シンプル型は110V/uS程度だったから、エミッタフォロアを挿入した効果が出ている。 ・C3=120pFの場合は10uSで750V立ち上がり、立下がっているので、スルーレートは75V/uS程度となるが、ちょうど理屈の75V/uSどおりだ。 |
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・次に入力を0.14Vp−p1kHz正弦波として出力を282Vp−p(要するに100Vr.m.s.)とした場合のFFT。 |
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・Total Harmonic Distortion=0.001609% ・上のシンプル型よりは大分良くなった。 ・が、これまで比較したものに比べるとまだ一番悪い。 ・が、これはもう良いな。(爆) |
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・と、シミュレートしているうちに基板が出来上がってきた。 ・2段目にSCT2H12NZを用い、2SC5466のエミッタフォロアを追加したもの。 ・損失の大きいSCT2H12NZと2SA1968は放熱板に取り付けるので、基板はAT−1S半分で済んだ。 ・2SC5466は600mW程度の損失になるが、まぁ放熱板なしでも大丈夫だろう。 |
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・回路はこう。 ・シミュレーションの通り。 |
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・電源部はこう。 ・電源トランスは、(株)フェニックスからRA80仕様でRコアトランスを入手。 ・整流ダイオードはこれもアメリカから逆輸入してあったロームのSiCショットキーバリアダイオードSCS306AP。コッククロフトウィルトン回路にもそれを用いる。 ・平滑ケミコンは220uF・400VのニッケミKMHねじ端子型。 ・0.01uF、630Vのコンデンサーは、ジャンクボックスに眠っていたニッセイのポリエステルフィルムかな。 |
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・電源部の基板。 |
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・アンプ部は、基板も二段目のSCT2H12NZもその定電流回路の2SA1968も、タカチのケース、HY99−33−23BBのヒートシンク側板にタップを切って取り付ける。 |
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・面倒なケース加工をして、ケースに部品を取り付けてみる。 ・ケースが9年前に作ったA案と同じ(黒いだけ)なので、配置構成は同じで、トランスと電源基板は、前面パネルと背面パネル間に1.5mm厚15mm×15mmのL字アングルで桟を渡してこれに取り付け、平滑ケミコンは、トランスの上空スペースを活用して背面パネルに取り付けてある。 ・また、ボリュームはこれまで作ったC案そしてA案と同様に東京コスモス電機(株)のRV30YGを使い、その配置もC案、A案同様前面パネルのど真ん中にした。 ・入力ピンジャックが2組なのは、2組を並列につないで、一方から入力信号をスルー出力しようとするもの。STAX純正ドライブアンプと同様の構成だ。 |
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・で、配線作業をする。 |
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・アンプ部。 |
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・終了。 ・次いで調整。 ・感電死したくはないので両手にゴム手袋をして、先ずはアンプ部への±電源接続コードを外しておいて、スイッチオンで電源電圧がちゃんと出るかどうかを確認する。 ・無負荷なので±410Vとなった。これで正常。 ・電源スイッチをオフにし、電解コンデンサーのチャージ電荷を100kΩの抵抗で抜いてその電圧を安全な電圧まで下げる。 ・次いで、先ずは片チャンネルの±電源コードをつなぐ。 ・アンプ部の50kΩと200Ωはセンターにしておくなど、しっかり確認しているので大丈夫だろうと思うのだが、この際の電源スイッチオンはやはり緊張する。 ・と、OUT+の電圧は十数V。ここで上手くいったなと確信する。 ・後は50kΩの半固定抵抗でOUT+とOUT-の電位差を0Vに、200Ωの半固定抵抗でOUT+とOUT-を0Vに調整する。これらは完全には0Vにはならないが、そんなに神経質になる必要はない。 ・片チャンネルが終了したら電源オフしてもう一方のチャンネルの電源コードをつないで同様に調整する。電解コンデンサーのチャージは片チャンネルのアンプの消費電流で速やかに放電されるので、この際は抵抗でチャージを抜く作業は不要。 ・これも上手く調整出来た。 ・この状態で電源電圧は±370V。予定より10V高いが想定の範囲内。 |
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・早速音出しにかかる。 ・う〜ん、素晴らしいではないか。 ・これがSiC MOS-FETの音か、などどいうことは何も感じない。 ・ただ音楽に浸る。 |
(2019年2月14日)